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第6話 魔法師団員たちは相談する

 ネイトンの入団が決まった日の夜。

 ミアは魔法師団の本部へとやってきていた。

 魔法師団長ラジウス=レオニールによって、呼び出しを受けたからだ。


「ミアです」


 ミアは団長室の扉をノックして名乗りながら、自分が呼び出された理由を考えていた。


 真っ先に思い浮かぶのは、ネイトンの入団に反対したことだ。

 あの反対自体は、今考えても当然のことだと思う。

 魔力を持たない人間を入団させるなどと聞けば、魔法師団を馬鹿にしていると考えるのは、当然のことだろう。


 まして、それがあのマギウス家の人間ともなれば、完全にコネ入団だ。

 ミアはそう判断したし、魔法師団メンバーの多くは同じことを考えたはずだ。


 とはいえ……魔法師団は、れっきとした軍の組織だ。

 軍人として、上官である魔法師団長の判断に反対するのは、処罰の対象となっても文句は言えない行動だ。

 ラジウス師団長は、あまり自分への反対意見を咎めるようなタイプではないが……今回は、少しやりすぎたような気もする。


 最大の問題は、あれだけ強硬に主張した入団反対が、完璧に間違っていたことだ。

 魔力を持っていないはずのネイトンは、明らかに魔法師団への入団に値する……というか、魔法師団の中ですら異常と呼べる力を持っていた。

 防御魔法もなしにミアの全力の魔法を防ぐばかりか、あまつさえ魔力を取り込んで自分のものにするなど、人間業とは思えない。


 そんな人間をミアは、魔法師団から追い出そうとしたのだ。

 一歩間違えば、自分のせいであの逸材を魔法師団から逃してしまう可能性すらあった。

 結果的には問題がなかったとはいえ……処分は覚悟すべきだろう。

 そう考えながらミアが待っていると、中から師団長の声が聞こえた。


「入ってくれ」

「失礼します」


 ミアが扉を開けると、ラジウス師団長は困惑の顔を浮かべた。

 彼女の表情が、やたらと硬かったからだ。


「どうしてそんなにビビってるんだ?」

「……ネイトンさんの入団に反対したことについて、処分を受けるのかと……」

「ああ、そんなことか。経緯を知らなければ反対するのは当然だし、処分はしないさ。……俺に反対したくらいでいちいち処分してたら、俺が間違った判断を下そうとした時に、誰も止めてくれなくなるだろ?」


 師団長の言葉を聞いて、ミアはそっと胸をなでおろす。

 どうやら、処分のつもりはないようだ。

 そんな中、背後の扉がノックされた。


「ネムです! 失礼します!」


 そう言って一人の団員が、確認も取らずに部屋に入ってくる。

 彼女はネム=ウィナーズ――王立魔法学園を去年卒業したばかりの、魔法師団でも最も若い団員だ。

 一応、学園では首席だったようだが……団員のうち半分くらいは王立魔法学園の首席なので、別に珍しい存在というわけではない。

 ミアに言わせれば、魔法の扱いはまだまだだ。


 とはいえ、ネムの魔力量は特筆に値する。

 彼女の魔力はラジウス団長を越え、魔法師団の中でもトップクラスなのだ。

 優れた魔力の扱いさえ習得すれば、彼女は大戦力になってくれるだろう。


「師団長! 何のご用でしょうか!」


 部屋に入りながら、ネムがそう尋ねる。

 普通、こういう時には師団長が何か言うまで待つものだが……どうやら、そのあたりの教育は行き届いていないようだ。


「実はネムとミアに、ネイトンの教育係を頼みたくてな」

「……教育係が2人ですか?」


 団長の言葉を聞いて、ミアは疑問を口に出した。

 魔法師団の新入りには、先輩メンバーが教育係としてつくのが慣例だ。

 それ自体に疑問はないが……1人の新入りに対して、2人の教育係がついたという例は聞いたことがない。


「もし自分ひとりでネイトンに常識を教えたいなら、一人でもいいが?」

「師団長のご英断とご配慮に、深く感謝いたします」


 ミアは納得し、団長の選択に心から感謝した。

 入団試験の後で、多くの団員がネイトンに常識を教えようとしたのだが……生まれてから20年近くかけて培われた、マギウス家での歪んだ常識を修正するには、あまりにも時間が足りなかった。

 欲を言えば3人……いや10人はほしかったが、1人よりはずっとマシだろう。

 少なくとも、多数決という技が使えるようになる。


「それと……実は教育係をつけるのは、ネイトンを守るためでもあるんだ。だから2人ほしい」

「……護衛ということですか? 魔法師団員が2人も護衛につくとなると、王族レベルの要人のような扱いですが」


 魔法師団員は、たった一人でも一般兵千人にも相当すると言われる巨大戦力だ。

 そのメンバーが個人の護衛につく相手など、ごく限られた大貴族だけだ。

 まして、『炎獄のミア』を含む2名が護衛となると……それこそ、王族にも匹敵する扱いといえるだろう。


「……この魔導具に見覚えはあるか?」


 ラジウス師団長は質問に答える代わりに、3つの魔導具を机の上に置いた。

 見覚えがないはずもない。

 3つの魔導具は、極めて有名なものだったからだ。


 マギウス式魔法灯。従来の1000倍を超える魔力効率を誇り、あっという間に全国へ普及した魔法照明装置。

 マギウス式魔法炉。料理から鍛冶仕事まで幅広く使われる、出力調整可能かつ超高効率な魔法加熱装置。

 マギウス式魔法冷却機。食料保存の常識を変えた、画期的な魔法冷却機。

 いずれもここ10年ほどで出回り始め、魔導具界の革命と呼ばれた品々だ。



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