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第34話 最強賢者、さらに痕跡を見つける


「こ、これは……」

「まさか地面に、こんな沢山の魔道具が埋まってたなんて……」


魔力吸収板を見て、ミアとネムがそう呟く。

そこには無数の魔道具が、巨大な箱を埋め尽くすように詰め込まれていた。

魔力を見る感じだと、数千個もの魔道具があるようだ。


「この魔道具、どういった機能だか分かりますか?」

「大量の魔素をもとにして、魔物を生み出す魔道具だ。必要な魔素とかは龍脈から引き込んでる感じだな」


俺の言葉を聞いて、ミアが他の師団員たちと顔を見合わせる。

そして、彼らは疑問げな顔で相談を始めた。


「龍脈の魔素から魔物を……? そんなことが可能なのか?」

「いえ。王国研究機関の論文にはすべて目を通していますが、そんなものはなかったかと」

「魔物の自然発生条件を再現できれば、理論上は可能なはずですが……それを同時多発させることが人間に可能かどうかまではなんとも……」

「という話だが……ネイトン、魔素から魔力を生み出せるというのは、どこの情報だ?」


ミアは困惑の様子で、俺にそう尋ねる。

子供の頃に悪戯で使っていた技術なので、誰でも知っているようなものだと思っていたのだが……どうやら意外と、知れ渡っていなかったようだ。

まあ、ああいった子供の悪戯を犯罪に応用しようなどと考えた者がいなかっただけかもしれないが。


「ええと……昔、ちょっと試したことがあるんだ」

「た、試した……? 何のために、どうやって?」

「子どもの頃、俺も魔法で遊びたかったんだよ。でも俺は魔力がないから、魔法を使うためには魔石が必要になる」

「ああ。それと魔物を生み出すことに、どういう関係があるんだ?」

「関係って……倒せるくらいの魔物を大量発生させれば、魔石がたくさん手に入るだろう?」

「……そんな小遣い稼ぎみたいなノリで魔法災害を起こさないでくれ」


俺の言葉を聞いて、ミアが呆れ顔になる。

確かにあれは、一歩間違えれば大惨事だった。

大人になった今ならあの悪戯の危険性がわかるが、当時の俺はまだ怖いもの知らずだったのだ。


「それで、結果はどうだったんだ?」

「魔物はちゃんと出てきたぞ。そのあと父さんに褒められて、母さんにはめちゃくちゃ怒られた。もうちょっとで犯罪者になるところだったって」

「もうちょっとっていうか……普通に犯罪じゃないか? 魔法災害防止法とか」

「被害が出なかったからギリギリ犯罪じゃないみたいだ。それに……なんか8歳まではどんな魔法を使っても犯罪にならないらしい」

「8歳未満だったのか……」


俺の言葉を聞いて、彼女らは頭を抱えた。

確かに、魔法犯罪に関する少年法は見直したほうがいいかもしれない。

守りの薄いタイミングを狙えば、8歳児が街の一つや一つを滅ぼせてしまうのが龍脈関連の魔法というものだし。


「ええと、魔物を生み出すことはできたとして……魔物が本能を無視して街に突っ込んできたのは、どう説明する?」

「『街に向かってまっすぐ走れ』みたいな単純な命令なら、魔物に組み込むのは難しくない。魔素の集まり方を少し偏らせればいいんだ」


俺はそう言って、魔石に残った魔力を眺める。

そこには確かに、意図的に魔素の集まり方を偏らせた形跡があった。

恐らく、子供の頃の俺と同じ方法で魔物を操作したのだろう。


「それも試したのか?」

「ああ。生み出した魔物は、魔物同士でぶつかり合って自滅してもらったんだ。魔物を倒すのに魔石を使いたくなかったからな」

「8歳にもならないうちから、ネイトンはこんな感じだったんだな」

「いや……今とはだいぶ違うと思うぞ」

「安心してくれ。ネイトンはネイトンだ」


ミアの言葉に、他の師団員たちが頷く。

それに反論しようとした俺は……ふと昔見たものを思い出した。

昔とはいっても子供時代ではなく、かなり最近……具体的には魔法師団の試験を受けるために、王都に来た時に見たものだ。


「ちょっといいか? 重要なことを思い出したかもしれない」

「どうした?」

「この魔道具に残っている魔力……以前に見たことがあるんだ」


俺はそう言って、地面に埋まっていた魔道具を指す。


魔道具に含まれる魔力のほとんどは、原材料となった魔石のものだ。

だが魔道具に術式を刻み込む過程で、魔道具制作者の魔力がわずかに混ざり込む。

その魔力によって、誰が魔道具を作ったかわかるのだ。


「魔道具の魔力って……魔石の産地とか、魔物の種類ってことか?」

「付与した人間のほうだ。この魔道具を作った人間の魔力に見覚えがある」

「魔道具から制作者を割り出せるのは、ネイトンなら今更驚かないが……まさか、知り合いか?」

「いや、これと同じ制作者の魔道具が売ってるのを見たことがあるだけだ。顔や名前までは知らない」


俺がこの魔道具を見つけたのは、まったくの偶然だった。

たまたま通りがかった店で、俺が設計した魔道具が売っていたので、つい店に入ってみてしまったのだ。


「……魔道具の制作元は分かるか?」

「わからない。目当ての魔道具とは違うものだったから、ちょっと魔力を見かけただけなんだ」


もしそれが俺の設計した魔道具だったら、設計図の販売先から情報を割り出せたかもしれないが、残念ながら違った。

まあ、俺が作った設計図が犯罪者の資金集めに使われていたと分かったら、それはそれで微妙な気持ちになったかもしれないが。


「その魔道具店に行けば、どれだか分かるんだな?」

「まだ売れてなければ分かる。王都の店だ」

「すぐ団長に報告して、王都に戻ろう」


俺の言葉を聞いて、ミアがそう告げる。

地獄の王都マラソンには参加しないでいいと思っていたのだが……どうやら自主的に参加する羽目になるようだ。


できればゆっくりとこの街に滞在して、魔法図書館の本を片っ端から読み漁りたかった。

だが今の俺はもう、魔法師団員だ。

王国を脅かす敵がいるなら、その正体を突き止めることを優先する必要がある。


それに……今回の事件を起こした人間は魔法犯罪者というだけでなく、魔法学の敵でもある。

魔法図書館の分館があるこの街を滅ぼそうとした罪には、死すら生ぬるい。


もし国が彼を裁かないとしても、俺が個人的に犯人を探し出し、生まれてきたことを後悔させたいくらいだ。

そんな制裁に魔法師団が力を貸してくれるというのだから、全力を尽くさない理由はない。


「分かった。すぐに帰ろう」


正直なところ、魔力がない俺は他の魔法師団員ほど速くは移動できない。

だが俺には脚があるので、走ることだってできる。

体力を前借りするような形で疲労をごまかす魔法や、眠気を無理やり飛ばす魔法であれば、魔石の魔力でも使える。

もちろん、それらの魔法は反動も極めて大きいのだが……とにかく犯人を特定さえすれば、後は魔法師団がなんとかしてくれるはずだ。


そう考えながら俺達は大急ぎで街へ戻り、師団長のもとへと向かおうとする。

しかし……その途中で俺は、ふと足を止めた。


「どうした? ネイトン」


急に止まった俺に、ミアがそう尋ねる。

だが俺はそれを無視して、遠くの魔力に意識を凝らす。

王都に戻るまでもなく、犯人の魔力が見つかったからだ。


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