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第24話 最強賢者、命令に違反する

それから数分後。

俺たちは街から出て、ドラゴンがいるほうへと向かっていた。


ドラゴンと魔物群れがそれなりに離れているのは、今のひどい状況の中では救いだな。

片方と戦いに行くともう片方にも襲われるような状況だと、流石に魔法師団員が2人いてもどうしようもないだろう。

しかも魔物の群れのほうは今のところ動く様子がないので、ドラゴンのほうさえ何とか片付けば、魔法師団の援軍が間に合う可能性も高い。


「ちょっと偵察をしてくる」


歩いている途中でミアが、そう告げた。

次の瞬間、ミアの足は地面から浮き上がり、ミアはどんどん高度を上げていく。

ミアが俺達のはるか頭上まで上がったところで、ミアは視覚強化魔法を発動し、それから降りてきた。


「魔鉱竜だ。ネイトンの報告通り、こちらに歩いて来ている。距離9キロ程度、街に到着するまで推定1時間」


9キロくらいの距離なら、飛行魔法と視覚強化で偵察できてしまうのか。

魔力をちまちま探るより、このほうがずっと正確だな。


「魔鉱竜ですか……」

「ああ。Aランク上位というネイトンの見立てに間違いはなかったようだな」


二人の表情を見る限り、魔鉱竜はあまり嬉しい敵ではないようだ。

ドラゴンの特徴は本でしか読んだことがないが、かなり頑丈なドラゴンだったはずだ。


「ネイトン、ドラゴンの炎は防げたりしないか?」

「実物を見てみないとなんとも言えないな。実は生きたドラゴンは見たことがないんだ」


魔物の魔力は、人間の魔力に比べて扱いにくい。

子供の頃、森で捕まえてきた魔物を魔力源にしようとしたのだが、あまり綺麗な魔力ではなかったのだ。


とはいえ制御自体は甘いものも多いので、頑張れば少しは魔力を抽出できた。

ドラゴンの炎がああいった魔力によるものだとしたら、防いだり跳ね返したりできる可能性は否定できない。

まあ、ドラゴンのような高位の魔物は、森で捕まえられる魔物(確かネズミかウサギだった気がする)などとは魔法的にも全然違うだろうから、あまり参考にならないかもしれませんが。


「魔石の魔力で攻撃はできるか?」

「無理だ。出力が低すぎて焼け石に水だ」


こちらは自信を持って言える。無理だ。

俺のような一般人が魔石を使っただけで、魔法師団員でも苦労するような魔物を倒せるのであれば、誰も苦労しないだろう。

そもそも、1個で1億ラピスもする……というか一般人では金を出しても手に入らないようなAランク魔石ですら、魔法出力はミアより3桁も低い。

Aランク魔石を1000個ほど用意してもらえれば戦い方は考えられなくもないが、王都にだって1000個もないだろう。


「分かった。ではネイトン、レオルスにて待機してくれ」

「レオルス? レオニリアじゃなくてか?」


レオルスは、今回の観測で最後から2番目に行く予定だった街だ。

この魔物災害が起こったことによって中間地点の観測は中止になったので、俺は行ったことがない街だ。


ここからの距離を考えると、馬を強化できない俺では数時間かかるだろう。

強化魔法の反動で馬に負担がかかっていることまで考慮にいれると、下手をすると半日はかかる。


「レオルスだ。魔物の襲撃を受ける可能性がない場所まで下がって、龍脈柱で状況を監視してくれ。状況に変化があればすぐに騎士団に伝えるんだ」


なるほど、戦力外だから連絡役に徹しておけというわけか。

当然の判断と言えるだろう。

戦えない人間が戦場にいても足手まといだからな。


「分かった」


俺はそう行って、街のほうへと歩き始める。

レオルスに行くにしても、一旦は街に戻って馬を取らないといけないからな。


その途中で俺は、ふと気になって魔石を取り出し、聴覚強化魔法を発動してみた。

ドラゴンと戦う魔法師団員が、どんな作戦会議をするのかが気になったのだ。

すると遠くから、ネムの声が聞こえてきた。


「……ネイトンさん、逃がしちゃってよかったんですか? 炎を防げるかもしれないのに」


どうやらちょうど俺の疑問を、ネムが聞いてくれていたようだ。

せめて炎を防げるかどうか確かめてから、ダメそうなら撤退させればよかったような気がする。

そう考えていると、ミアが答えた。


「こんな戦いに巻き込むわけにもいかないだろう。国の……というか世界の宝だぞ」

「ですよねー」


どうやら彼女らは、俺について勘違いしているようだ。

確かに俺の家は名門だし、マギウス家の魔法使いは大体が『国の宝』と呼んでも差し支えないような人間だが……俺自身は国の宝でもなんでもない。ただの落ちこぼれだ。


「でも逃げないってことは、勝算はあるんですよね?」

「ああ。1割でもあれば戦うとは言ったが……2割くらいは可能性があるんじゃないか?」

「ダメそうだった場合、撤退は?」

「無理だろうな。ドラゴンとの戦いなんだから、ダメだと思った次の瞬間には死んでるさ」


どうやら、なかなか厳しい戦いのようだ。

というか聞いている話だと、ミア達は8割方死ぬということらしい。

二人で問題ない戦いなら、俺は喜んでレオルスまで逃げるつもりだったのだが……ギリギリの戦いとなると、話が変わってくる。


ドラゴンが持つ武器の中で最も危険なのは、口から吹く炎だ。

もし俺がドラゴンの炎を防げるのであれば、多少は役に立てる可能性がある。

俺がいることによって少しでも戦いが楽になるなら、俺は残るべきだろう。


しかし命令違反は厳禁だと、ミアに言われている。

無駄死にをする権利がないという話も、すでに聞いた。

もし命令違反をすれば、腕立て伏せどころかクビになっても文句は言えないだろう。


俺は悩んだ結果……こっそり命令を破ることにした。

ドラゴンが火を吹くところを見て、もし防げそうだったら乱入するのだ。

……ドラゴンがいるのは森の中なので、隠れる場所が多くて助かるな。


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