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第21話 最強賢者、危険地帯に向かう


「魔法師団の援軍が到着するのに、どのくらい時間がかかると思う?」


馬の速度に慣れてきたところで、俺はミアにそう尋ねた。

生死に関わる問題なので、聞いておく必要がある。


「そうだな……王都の全魔法師団員を集合させるのに15分、そこから全員がレオニリアまで移動するとなると……丸2日で済めばいいほうだな」

「2日もかかるのか……」


この速度が維持できれば、王都からレオニリアまで3時間ちょっとの計算だ。

だが、そううまくはいかないようだな。


「ああ。魔力を節約しながら移動するには馬を使うしかないが、馬は200キロも走れば限界だ」

「途中で馬を乗り継ぐのはどうですか!?」


ミアの言葉に、ネムがそう尋ねた。

確かに、その手を使えば速く移動できそうだ。

だが……。


「魔法師団員の強化魔法に耐えるには、特殊な訓練を受けた馬が必要だ。予備はそんなに多くない」


どうやら普通の馬ではダメなようだ。

本に書いてあった限界を超える速度も、そういう馬だからこそ実現できたのかもしれない。


「……ドラゴンのほうは援軍なしでもで倒せるかもしれないが、魔物の群れが問題だな」


進んでいる途中で、ミアがそう呟いた。

どうやら、レオニリアを守る作戦を考えていたようだ。


「私とミアさんの魔力を全部使うとして……10万体が相手だと、10分持ちこたえるのが限界でしょうか」

「レオニリアには立派な外壁があるから、あれをうまく使えば30分はいけるはずだ。だが……それが限界だ」


……10万の魔物を相手に、たった2人で30分も耐えられるのか……。

そう考えていると、ミアが口を開いた。


「あらかじめ宣言しておくが、街を守れる可能性がゼロだと判断した時点で、私は撤退宣言を出す。その際、一切の反論および命令違反は許さない」

「街を見捨てるんですか!?」

「覚えておけ。一般人には自分の好きに死ぬ権利があるが、魔法師団員は無駄死にを許されない。それは王国魔法師団の戦力を自ら減らす、反逆行為だ」


無駄死にする権利はないというわけか。

魔法師団は優しいんだか厳しいんだか分からないが、死ぬのは嫌なので、とりあえず優しいということにしておこう。


「しかし、レオニリアか……魔物の分布が変わっている報告はあったのだから、もう少し早く調査をすべきだったな」


馬を走らせていると、ミアがそう呟いた。

レオニリアの異常は今日に始まったことではなかったようだ。


「そういえば、2ヶ月くらい前から色々と噂はありましたけど……」

「ああ。その原因を調べるのが、今回の調査の目的だったんだ」

「……だから最終調査地点が、レオニリアだったんですね……」


言われてみると確かに、今回の調査ルートはレオニリアに向かって街道を進んでいくような形だった。

メインはレオニリアの調査で、他の場所の調査は移動のついでだった訳だな。

……俺の突拍子もない報告がいきなり信じてもらえたのも、こういった事情があったからかもしれない。


「レオニリアは昔から、魔力的にやや不安定な場所だと言われている。魔物が30万いるのが本当だとしたら……戦わずに撤退ということも考えられる。再確認しておくが、命令違反はするなよ」

「ああ。分かった」

「了解です!」


どうやら俺達の調査は、ちょっと遅かったようだ。

もし異変があってすぐに調査が行われていたら、じっくりと迎撃の準備をすることもできたかもしれないが……実際に魔物の大発生が起こったのは今のタイミングなので、調査が早すぎても気付けなかった可能性はある。

運が悪かったと割り切って、今できることをやるしかないだろう。


「とはいえ、成果を得られる可能性がある場合は、命を賭けるのが私達の仕事だ。街を守れる可能性が少しでもあると思えば、撤退はしない」

「りょ……了解です!」


まだ諦めた訳ではないということだな。

そのあたりの判断は、リーダーであるミアに任せればいい。

勝てる戦いかどうかは、ミアが一番詳しいだろうし。


とはいえ、街の人を見捨てるというのも、できれば避けたいところだ。

なにか使える手は……と考えたところで、俺はひとつの案を思いついた。


「撤退する時、転移門を使うのはどうだ? 街の人も一緒に避難させられるかもしれない」


転移門。

2つの空間をつなぐ門を作り出し、人間を一瞬で移動させる魔法だ。


「転移門って……無理に決まっているだろう。400キロの長距離転移なんて、準備を整えるだけで1ヶ月はかかるぞ」

「……そんなにかかるのか……」


父は準備なしに転移魔法を発動していたのだが、よく考えてみると彼はこの国の中でも転移門の第一人者とされている魔法使いだったはずだ。

他の人が使おうとすると、時間がかかるのかもしれない。

あるいは、距離を稼ごうとすると時間がかかるのか……。

いずれにせよ、彼を呼んで解決するならとっくに呼んでいるだろうから、何かそれができない理由があるのだろう。


残念ながら、転移門は使えないと考えたほうがよさそうだ。

もしダメそうならレオニリアは見捨てることになるが……できれば、そうはしたくない。

魔法師団としての任務も重要だし、それに加えて――レオニリアには、王立魔法図書館の分館があるのだから。



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