表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

第2話 最強賢者、魔法師団に招待される

「……就職先は自分で考えたいって、言ったはずだと思うけど」


 俺は父の言葉を聞いて一番に、そう口に出した。

 正直なところ、父の権力があれば、俺を何らかの研究職につけるのは簡単だとは思っていた。


 ありがたい話ではある。

 だが、それではちゃんとした研究者とはいえないだろう。

 人間には、能力相応の仕事というものがある。

 自分の力でつけない仕事に親の権力でついたところで、あまりいい人生は待っていないはずだ。


「自分で考えたいって……何か、やりたい仕事があるのか?」

「領地経営の手伝いとか、事務仕事とか……」

「お前に事務仕事をさせるほど、マギウス家は落ちぶれてはおらんよ」


 俺の言葉を聞いて、父は鼻で笑った。

 どうやら、俺に事務仕事をさせるつもりはないようだ。


「それと、もしかしたら勘違いしているかもしれないが……今回の仕事は、向こうから頼まれたんだ。お前を名指しで、紹介してほしいとな」

「一体どこの馬鹿が、俺なんかを雇いたがるんだ?」


 今の話を聞いて、余計にその就職先への興味が失せた。

 俺をなんかを雇いたがる時点で、ロクな人間ではない。


 なにしろ俺は、魔法研究に関しては何の実績もなく、ただ『マギウス家の三男』という一点を除けば、世間に全く知られていない存在なのだ。

 そんな俺を雇いたいなどと言う人間は、どうせ本人の能力には興味がなく、ただ『マギウス家』という名前を使いたいだけのクズに決まっている。

 まあその仕事につけば、名義貸しの代金くらいはもらえるのだろうが……そのために自分の生まれ育った家を貶めるほど、俺は落ちぶれてはいない。


 などと考えている途中で俺は、父が魔導具を持っているのに気がついた。

 俺が大昔に設計した……『録音』の魔導具だ。


「今の言葉、録音させてもらったぞ」

「……こんな軽口を録音して、何の意味があるんだ?」

「お前がこの人を馬鹿呼ばわりしたっていう証拠になるな」


 そう言って父ルインズは、俺に1枚の紙を見せる。

 紙には、俺が先ほど、馬鹿呼ばわりした人間の名前が書かれていた。


 ――――――――――

 招待状


 ネイトン=マギウス

 貴殿の功績および実力を認め、レオス王国魔法師団に招待する。

 もし興味があれば、魔法師団まで連絡されたし。


 レオス王国魔法師団 師団長 ネイトン=レイニール 

 ――――――――――


「……は?」

「お前を雇いたがっているのは、魔法師団だ。……だが興味がないようなので、今の録音つきで断りの連絡を出しておこう」


 そう言って父は、紙に『興味がないようです』と書き、魔導具と一緒に手紙に入れようとする。

 もしこの魔導具が世に出回れば、俺の魔法研究職としての道は永遠に絶たれるだろう。


 だが、それは一旦置いておこう。

 それより気になることがある。


「待ってくれ。……なんで魔法師団が、俺なんかを雇いたがるんだ?」

「お前が優秀だからだな」

「優秀も何も……魔法師団は、俺が何をしてるかなんて知らないはずだろう?」

「魔導具の設計依頼には、魔法師団からのものもあっただろう? あの設計図が、師団長の目に止まったんだ」


 ……言われてみれば、魔法師団からの設計依頼はあったな。

 だが、頼まれたものはごく基本的な魔法理論しか必要としない、簡単な魔導具だけだ。


 あんなもので魔法師団に入れるなら、今ごろ魔法師団は何百万人ものメンバーを抱えているはずだ。

 実際の魔法師団は1000人もいない精鋭部隊なので、そんなことは絶対に有り得ないのだが。


「まあ、お前がこれの依頼書を見れば、困惑するのは予想していたよ。お前は世間を知らなすぎるからな」


 世間知らずと言われてしまうと、返す言葉もないな。

 確かに俺は生まれてからこの歳になるまで、ほとんど領地から外に出ることもなく魔法の研究ばかりしていた。

 俺ほど世間を知らない人間は、なかなかいないだろう。

 とはいえ、自分が魔法師団に入れないことくらいは分かる。


「というわけで……魔法師団に一つだけ頼んでおいた。試験を受けさせてくれとな」

「……試験?」

「ああ。お前の実際の実力を見て、魔法師団員にふさわしいかどうか判断してもらうんだ。……そうでもなければ、ネイトンは私が権力を使って、お前を魔法師団に押し込んだとでも思うだろう?」


 ……この点に関しては、父の言う通りだ。

 正直なところ、俺は今もこの招待状が、父の権力によって作られたものではないかと疑っている。

 しかし、試験を受けたら受けたで、俺が受かるように細工をしているような可能性もある。


「ちなみに試験を受けないなら、先程の録音を……」

「受ける」


 どうやら、断る選択肢はないようだ。

 まあ、魔法師団が実際に俺の実力を見れば、流石に入団させる訳にはいかないと思うはずだ。

 落ちるために試験を受けに行くのも微妙な気持ちだが……まあ、実力不相応な場所に権力だけで入るよりは、まだマシという気もするな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ