第4話 回復しすぎて全員元気
依頼内容はこうだった。
【軽傷者の治療・一名】
「……一名?」
アロルドは紙を見て首をかしげた。
「軽い仕事じゃん」
ルシアンが言う。
「たぶん大丈夫ですね〜」
イリスがにこにこする。
「……嫌な予感しかしない」
セレナだけが静かだった。
現地に着くと、そこには――
包帯でミイラみたいになった男が一人、ベンチに座っていた。
「えっと……どこが軽傷なんですか?」
「足の小指をぶつけました」
「……それだけ?」
「それだけです」
全員が黙った。
「じゃあ……治しますね〜」
イリスが手をかざした。
淡い光。
男の小指が治った。
同時に、男の顔色がものすごく良くなった。
「……あれ?」
背筋が伸びる。
立ち上がる。
走り出す。
「ちょ、元気すぎません!?」
「なんか体が軽い!!」
「やりすぎた?」
イリスが首をかしげる。
「……過剰回復。活性化まで行ってる」
セレナが言った。
「戻せませんか!?」
「戻せない」
「戻せないんですか!?」
男は跳ね回り始めた。
ベンチを飛び越え、屋台を飛び越え、犬を飛び越えた。
「止めろー!」
アロルドが追う。
「任せて!」
ノアが召喚したのは――トランポリン。
「なぜ!」
男は跳ねてさらに飛んだ。
「ほら、楽しいでしょ!」
「楽しくない!」
ルシアンが縄を投げる。
失敗。
セレナが魔法で凍らせる。
地面ごと凍る。
町の人が転ぶ。
「被害増えてる!」
「ごめんなさい〜!」
イリスが回復をかける。
転んだ人が立ち上がる。
走る。
跳ねる。
「増えた!」
元気な人が五人になった。
「なにこの感染症」
「感染じゃない、伝播」
「言い換えるな!」
最終的に、ノアが召喚した巨大クッションで全員を受け止めた。
町の人たちはクッションの上でぴょんぴょんしていた。
「楽しい!!」
「もういいです!!」
アロルドは地面に崩れた。
依頼は成功扱いになった。
報酬は減った。
「なんで!」
「町を遊園地にしたので」
受付嬢は笑顔だった。
アロルドは思った。
この世界の「回復」は、信用してはいけない。




