第1話 登録したら人生終わった件
アロルド・ルクレールは、人生でこれほど真剣に「ここに名前を書かなければよかった」と思ったことはなかった。
「はい、登録完了です。こちらがあなたのパーティメンバーになります」
ギルドの受付嬢は、花が咲くような笑顔でそう言って、紙を一枚差し出した。
アロルドは嫌な予感しかしなかった。
「……パーティ?」
「はい。現在、ソロ冒険者は受け付けておりません」
「聞いてません!」
「規約の三十四ページに書いてあります」
「そんなところ誰が読むんですか!」
受付嬢はにこやかに黙った。強い。
「えーっと、剣士さんがリーダーですね」
いつの間にか決まっていた。
「次、魔導士のセレナさん」
「よろしく。死なないようにして」
「縁起でもないこと言わないでください!」
「事実」
「事実でも!」
「次、斥候のルシアンさん」
「いやー、よろしく。なんか面白そうだね」
「面白さで決めないでください!」
「次、神官のイリスさん」
「あ、はい。えっと、がんばります〜」
「がんばってください本当に!」
「最後、召喚士見習いのノアさん」
「よろしく! ぼく、初パーティ!」
元気だけはある。
アロルドは全員の顔を見回した。
誰一人として、安心できる要素がない。
「……解散ってできますか?」
「違約金が発生します」
「いくらですか」
「あなたの全財産の二倍です」
「じゃあ無理ですね」
「そうですね」
受付嬢はまた笑った。
その瞬間、ノアが言った。
「ねえねえ、さっそく召喚していい?」
「待て待て待て待て!」
遅かった。
光。風圧。謎の鳴き声。
そしてギルドの天井が、なぜか半分消えた。
「……何を召喚したんですか」
「えっと……羊です」
「なぜ天井が消える」
「たぶん、サイズ指定忘れた」
「忘れるな!」
巨大な羊が、ギルドの中で鳴いた。
受付嬢が言った。
「修理費、後日請求しますね」
アロルドは天井を見上げた。
彼の異世界生活は、たぶんもう手遅れだった。




