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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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優しい貴女の、手を引いた

優しい貴女の、手を引いた。

「エティ、海に行く許可を貰えたわ。今日にでも行きましょう。」

「わあ、本当ですか!早速支度しましょう!」

ダメ元で聞いてみたのだが、案外あっさりとレオは許可してくれた。セラもエティの様子は見ているのだが、それ程違和感があるようにも見えない。

嬉しそうなエティを見ると、気が緩んだ。

指輪のことは誤解だった。あんなに取り乱して恥ずかしい気もしたが、仕方がないようにも思う。ましてやレオが全てを知っていて、その上で本気で結婚を考えていたなんて。

あの話をしても尚、それが現実になるとは思えなかった。それでもこれ以上レオを疑う理由もない。今、一緒にいる時に感じる幸せがまだ少しだけ続く。それだけで、十分だ。

支度をして、馬車で海の近くまで向かう。

降りて少し歩けば吹く潮の匂いと共に白い砂と青い海が目の前に広がっていた。

「わあ....!綺麗ですね、セラ様。」

「ほんと。エティは海に来たことはあるの?」

「実は初めてなんです。セラ様は、来られたことはあるのですか?」

「そうね。旅をしている時に少しだけ見たことがあるわ。あまり楽しむ余裕はなかったけれど。」

「確か薬師をしていたと仰られていましたよね。楽師はいつからされているのですか?」

「楽師になったのはこの離宮に来てからよ。それまでは弟を探しながら旅をしていたわ。」

「弟....ですか?」

「そう。敗残兵として行方不明になっていてね。レオ様が探すのを手伝ってくださると言ってくださったの。」

「そうなのですか...見つかると良いですね。」

本当は見つかっている。だがその存在は知られるべきではないのだろう。

「ありがとう。エティもお母様が病気なら大変でしょう?」

「父は懸命に働いています。弟や妹はまだ働ける年ではありませんので、私が頑張らねばならないのです。」

前を向き、そう言うエティの顔は固い決意に満ちていた。

「セラ様、少し歩きませんか?」

「そうね、見ているだけもなんだから。」

白い砂の上を歩き、さざめく波を眺めながら歩いていると、眼前には聳え立つ岩が見えた。気づけば端まで来ていたようだ。

「エティ、そろそろ戻り....」

「セラ様!」

エティがセラの手を取って走り出した。岩陰まで来るとセラの手を離した彼女は焦った顔をしている。

「エティ、どうしたの?」

「いえ、何者かが近くにいた気がして....ですが気のせいだったようです。」

「そうなの?なら――――」

背後に人影を感じた時は遅かった。

「っ!」

口に押し当てられた布に、遠のいて行く意識。

「申し訳ありません、セラ様。」

最後に聞こえたのはエティの声だった。

 

平穏が束の間過ぎました。

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