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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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見えてしまったものが告げる終わり

見てしまったものが告げる終わり

「偶には俺の部屋で弾くか。」

昨晩そう言われてレオの部屋へ向かった。仕事が立て込んだのだろう。今日はかなり遅い。

最近は忙しくて夜来ることすらできない日が多かったからまだいい方かもしれない。

「実は今戻ったところでまだ湯浴みを終えてないんだ。先にしてきてもいいか?」

「私は構いませんが...」

「適当にゆっくりしててくれ。一応リュートなんかもあるから弾いてみてもいいぞ。」

そう言われて待っていたが、座っているとどうにも落ち着かない。そもそも王弟の部屋に1人でいるのもどうかと思う。それだけ信用してくれているということなのだろうけど。

普段あまりじっくり見ることのない部屋。

王族にしては簡素と言っても差し支えないが、置いてある物は全て最高級の物ばかりだ。それでもリュートが気になって近づいてみた。

とその時目に入ったのは隅に置かれている小さな箱。

大きさや質感から見て中に入っているであろう物は一つ。

開けてはいけない。レオの私物を勝手に触るなど......

中身への恐怖が勝った。開けた箱に入っていたのは予想を裏切らない物。

(思ったより早かったな...)

婚約者が出来ればセラは去る。そう決めていた。だが思ったよりも早いその訪れに動揺がないと言ったら嘘になる。

ショックよりもこれが現実だと脳は認識しようとはしなかった。涙すら出ないまま呆然としていると、後ろから呼びかける声が聞こえた。

「セラ、戻ったぞ。」

お風呂上がりで無駄な色気を放ったレオがこちらに歩いてくる。

「あ、レオ様....」

「どうした?」

やめて。婚約者が出来たのならそう言って欲しかった。知らないままこの優しい顔に溺れている私が馬鹿みたいじゃないか。

「いえ、何でもありません。リュートが気になって見ていました。」

「見るだけじゃなくて弾けばよかったのに。」

「いえ、私はリュートあまり得意ではないので。」

「そうなのか?意外だな。」

「手が小さくて弾きにくいんです。音は好きなんですが。」

「ああ.....お前の手は確かに小さいな。」

そう言いながらセラの手を取る。

「こんな小さい手が剣を握り、あの音を鳴らすのか。不思議だ。」

「伸ばそうと引っ張ってみたりしたんですが、ダメでした。」

「そこまでしたのか?小さいのも可愛いのに....あっち、行くぞ。」

いつものようにセラを膝の上に座らせていつものようにキスをする。幸せそうな顔で。

正式に婚約したら言うつもりだったんだろうか。それとも婚約して結婚しても愛人として置いておくつもりだったのか。

どちらも嫌だ。それなら自分から出て行く方がいい。

「本当に何かあったのか?浮かない顔して。俺が何かしたか?」

心配そうに覗き込む顔が本気だと思うのは幻覚なのかもしれない。

今日はダメだ。これ以上いたら余計なことを言ってしまう。

「...少し、体調がよくなくて。部屋に戻ってもいいですか?」

「ああ。そうした方がよさそうだ。送る。」

「いえ、1人で大丈夫です。」

「そう言うな。そんな顔して一人で行かせる方が心配だ。」

あまり抗えば指輪に気づいたことに気づかれてしまうと思った。

「...分かりました。ありがとうございます。」

顔を、今日は見たくなかった。見たら泣いてしまう気がしたから。

「エティ、セラの体調が良くない。よく見てやってくれ。」 

そうだ、エティとの海のことも聞こうと思っていたのに。

「セラ様、大丈夫ですか?確かに顔色が...。すぐに休みましょう。」

「ありがとう、エティ。」

部屋に戻ってベッドに入った。

さっき触れられた手を見た瞬間、目にした指輪がよぎった。

頬に、温かいものが伝っていた。

普通に誤解しますよね。

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