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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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潮風の紛れる密輸の気配

潮風に紛れる密輸の気配

夜の港に吹く風は冬の訪れを示していた。風は潮の匂いを街に運び、冷気も同時に運んで行く。

「夜はやはり冷えますね....」

「この時期だからな。よく見ておけよ。」

レオとクシェルは密輸船が着港するとされる場所に来ていた。一先ず証拠現場を見ないことには手の打ちようがないということになったのだが、邸内に信用できる者がいない以上、レオとクシェルが直接出向くしかないとなった次第だ。

夜とはいえ港にはまだ人もおり、船も到着していた。

待つこと1時間ほど。灯火を消したまま入港した船があった。

「あの船....」

「匂うな。少し近付くか。」

「これ以上は危険です。護衛も連れてきていないのですよ。」

「分かってる。だがここからだと見にくい。」

「では向かいの倉庫裏に移動しましょう。それ以上はダメです。」

「仕方ないな。」

移動した倉庫裏から船まではまだ距離がある。だが船は妙に早く入港を許されたようだ。始まった荷揚げは異常な静かさで行われている。

「これは....」

「当たりだな。」

「どうします?」

「もう少し様子を見る。麻薬なら馬車に積んで倉庫へ運ぶはずだ。」

荷揚げを終えた馬車が停まったまま、御者が周囲を何度も確認している。

何もないと判断した御者が鞭を軽く入れると、馬が進み始めた。

「追うぞ。」

馬車は不自然な路地裏へと抜けて行く。

「....間違いない。だが俺たち2人で行っても返り討ちに遭うのがオチだ。一旦帰って作戦を立てるぞ。」

ザッ...ザッ.....

「誰か来る。急げ。」

「誰かいるのか?」

ここで見つかれば全ておじゃんだ。ましてや王弟などと知られれば敵は死に物狂いで捕えにくるだろう。

灯りを向けられる寸前、裏から逃げ出したレオとクシェルは必死に走った。

「ここまで来れば大丈夫ですかね....」

「王弟ともあろうものがここまで無様に走る羽目になるとはな....」

「で、どうするのです?」

「正直誰も信用出来ん。マリウス含めた15名ほどを何も言わずに連れて行く。聞かれても俺の護衛任務だとでも言う。着いたら中継倉庫へ向かう馬車を狙う。」

「流石に近衛隊長が裏切り者ではないと思いたいですね。」

「全くだ。セラにはちゃんと護衛をつけているな?」

「はい。腕の立つものを選びました。」

「それならいい。戻るぞ。」

 

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