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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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一瞬の熱、すれ違う心

一瞬の熱、すれ違う心

一瞬、幻覚でも見たのかと思った。

それくらいあり得ないことだった。

セラが、自らキスするなんて。

遠慮がちに触れられた唇は短く、離された。

セラ自身、己の行動に戸惑っているように見える。

それでも十分だった。理性を飛ばすには。

気づけばセラはレオの下にいた。止めもしないセラを見下ろし、服に手をかけようとした。

セラの委ね切った目を見た瞬間、我に返った。

(俺は...何をやっている。)

あの時と同じ失態はしないと言ったばかりだ。婚前関係でも結び、子でも成せばセラの名誉は失墜し、結婚どころではなくなる。

「...レオ様?」

「...お前が悪いぞ。あれは予想外だった。」

「...レオ様は、傷のある女はお嫌ですか?」

「は?」

待て。何かが違う。

「私の身体には多くの傷があります。女として見られなくても当然です。」

「何を言って――――」

セラの目から溢れる涙。正さなければならないと思うのに、何から伝えていいのか分からなかった。

「申し訳ありません。忘れてください。1人にしていただけるでしょうか。」

「違う、セラ。俺はそんなつもりじゃ...」

「分かっています。私がおかしいのです。頭を冷やす時間をください。」

そこまで言われて、何も言えなかった。ただ無言で部屋を出るレオを、セラは見ようともしなかった。

 

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