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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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ただ、この瞬間を貴方と望む

ただ、この瞬間を貴方と望む

『俺を、愛しているのか?』

その一言に、どれ程絶望したかなんて、きっと貴方は知らない。

素直に言えたらどれ程よかっただろう。

私を溶かし、満たしてしまう貴方のことを。

『今は、まだ言えない。だが――――

信じてくれるか?』

ああ、この人は全てを知っているのだと悟った。その上で私を愛してくれているのだ。

王族の地位を捨ててくれなんて思わない。もし私が最後、貴方の元を去ることになったとしても。

『......信じます。』

今この瞬間を。今ここに貴方といられる時間を望もう。何も望みを口にしたことのない人生。望むことを教えたのは貴方だった。

重ねられた唇はあの時とは違う。ゆっくり、深く体の奥まで痺れるよう。その胸に縋れば、応えるように強められる腕。絡まる舌も、感じる熱も、全てが気持ち良い。名残惜しそうに引かれる糸は、生まれてしまった繋がりを示していた。

「....セラ.....」

熱っぽい目。欲に溢れているのに嫌じゃないどころか嬉しいなんて。私はどうなってしまったんだろう。

「はぁ.....お前に、嫌われるかと思った。」

「....私も、レオ様が私といるのは嫌になったのではないかと思いました。」

「そんなわけないだろう。何故そんなことを思った?」

「帰り道無言で...医務室へ行く時も何も仰らなかったので。」

「あれは俺が怖がらせたと思って自己嫌悪に陥ってたんだ。部屋にすら入れてもらえないと思っていたから安心した。」

「.....グレータ様に、言われたのです。話さねば分からないと。」

「グレータに?」

「はい。傷のことも....心配してくださいました。やはりレオ様の乳母なのですね。」

「あのお節介め.....まあ今回は助かったがな。」

「ところであの護衛の方はどうなったのですか?」

実は気になっていた。確かに失態とは言え首まで飛ばされていたら罪悪感で消えたくなる。

「ああ。護衛からは解任したがそれ以上はしていない。あとな、明日からお前に護衛をつける。あんなのじゃなくてちゃんと腕がいいやつをな。」

「....狙われたのが私だからですか?」

「ああ。お前が強いのは分かるが、さっきも言った通りお前が傷つけば俺が耐えられん。今回の件を受けてまた狙われる可能性もある。悪いが諦めてくれ。」

「.....分かりました。」

「よし。セラ。」

器用に話しながらベッドの上にセラを抱えて移動した男の顔はかつてなく甘い。

「もう一回。」

「何を――――」

聞き終わるまで待ってはくれなかった。足りないと言わんばかりに止まないキスは息をすることすらままならない。

「...はぁっ.....」

「許せ。どれだけ我慢したと思ってる....」

耳元で触れる息に震える身体。

「んっ..」

「耳、弱いのか?」

「やめっ.....」

「可愛い。赤くなった顔も、感じた声も、愛しくてたまらない....」

首筋をなぞり降りていく手――――

「レオ様っ......」

「......悪い。あまりにも可愛くておかしくなりそうだった。」

「....もう。」

「慣れてくれ。そんなんだと最後までしたら持たないぞ?」

「なっ......」

さっきまであんなに萎れていた癖に。

「さて。俺は今日は戻る。もっといたいがこれ以上一緒にいたら歯止めが効かなくなりそうだからな。」

「はい.....」

名残惜しい。そう思う自分が憎らしい。さっきだって。その下に触れて欲しいと思いながら止めてしまった。何も望まないなどと言っていた自分が。

「そんな顔するな。俺だって離れたくない。」

同じく名残惜しそうにキスを落として出ていくレオを見送った。

変わってしまった関係。嬉しいのに、どうしようもなく怖いと思う。幸せの味を知ってしまった。もう戻れない。

残る体温も、匂いも。愛しいと、思ってしまった。

晴れて恋人になりました。

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