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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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傷つけなはずの想いで、傷つけてしまう

傷つけぬはずの想いで、傷つけてしまう

怯えた目。震えていた指先。

あんな顔をさせるはずではなかったのに。

セラがその実怖がりであることに気づいたのはいつだったか。怖がりな故に完璧に演じ、周到に用意する。その癖死に場所を求めるかのように飛び込む性格を、知っていたはずではないか。

帰り道、不安げなセラを慰める方法が思いつかなかった。怖がらせたのは自分なのだ。早く離れてやる方がいいと思った。

医務室に連れて行くのはグレータに任せ、執務室に戻った。

グレータは何も言わなかった。

「しかし災難でしたね.....折角の息抜きだったのに。海にも行けなかったんでしょう?」

クシェルは心底気の毒そうに言った。

「ああ......賊の男、捕まると分かった瞬間に自ら舌を噛み切った。余程訓練されていると見える。」

「武器などを調べさせています。何か見つかるといいのですが。」

「間違っている可能性もあるが、コアルシオンの者のような気がする。発音に僅かだが訛りがあった。」

「コアルシオンですか....麻薬の件もコアルシオンが絡んでいそうですし、何かありそうですね。」

「そうだな.....サントラ家の娘の誕生日パーティーの招待を受けたと言っていたな。何か情報があるかもしれないから行ってみる。」

「また狙われなければいいですが。」

「狙われたのはセラだ。」

「セラ様ですか?殿下ではなく?」

「ああ。俺には目もくれずセラの方に向かって行った。」

「何故....出自がバレたのでしょうか。」

「それなら狙ったのは商人の父親かベルシュタイン辺境伯ぐらいだろうが、それなら直接連れ戻しに来るか王に申告しそうなものだ。」

「それもそうですね。」

「セラが俺のアキレスだと知って狙われたのだとしたら......俺のせいだな。」

「いつになく弱気ですね。」

「怪我をしたのを見て我を失いそうになって怖がらせた。危険な目にも遭わせた上にその様だ。海の底にでも沈みたくなる。」

「セラ様には見たことのないような顔しかしてませんもんね.....どうするのです?かと言って麻薬調査の上で今更楽師をやめさせることは出来ません。」

「それはそうなんだが......。セラには常に護衛を付ける。あんな役に立たない連中ではなく、腕の立つ者を用意しろ。」

「賊の腕が良かったと言えば仕方がないですが、確かに今回の件は失態でしたからね。セラ様がいなければ処罰を受けていてもおかしくありません。」

「全くだ。セラに感謝してほしいくらいだな。」

 

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