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白い湯で馳せる想い
風呂に身体を浸す。女らしいと思われるかもしれないがレオが好むのは専らミルクバスだった。暗い照明に浮かぶ、白くて柔らかい湯。僅かに甘さの残る静かな香りは心を鎮めてくれた。
まるでセラのようだ。
凛としているようで柔らかい雰囲気を纏う彼女の綻んだ笑顔は甘く、知的な話ぶりは彼女の静けさを表していた。
そして、その存在はレオを鎮めてしまう。
彼女は旅人だと言った。あの美貌とハープの腕を持ちながら何故そんなことをしているのかは分からない。だが今日幸せだと口にした時は未知の話でもするような口ぶりだった。
何を抱えているのだろう。解放してやれるものなら、してやりたい。
庇護欲など湧くことのないレオにそんな欲が産まれた。
(いっそ具現化でもしてセラの様子を見に行ってきてくれれば助かるんだがな。)
まあいい。ゆっくり聞いていこう。いくら彼女でも今すぐ旅に出てしまうこともあるまい。
だが、その考えは甘かった。




