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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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支度の朝、固まるレオ

支度の朝、固まるレオ

「セラ様、今日は海に行かれるのですよね?でしたら髪は纏めておきましょうか!」

朝からエティの元気な声が響く。この4日、部屋を訪れたレオは夕飯の時とは打って変わり静かにハープを聴いて去っていった。

その差に、戸惑ってしまう。何を考えているんだろうと、知っても仕方のないことを、知りたくなってしまう。

「うん、纏めてもらえると助かるわ。」

「少しお化粧もしましょう。折角のお出かけですから!」

「でもお忍びよ?目立ったらまずいから化粧はいいわ。」

「少しだけです。後悔はさせません。侍女の名にかけて!」

エティがただの素直な子ではないことにも気づいてきた。

「......本当に少しにしてね?」

エティは若い割に化粧も上手なようで手早く行ってくれた。化粧なんてしたことのないセラとは大違いだ。

「出来ました!いかがですか?」

そう言って差し出された鏡を覗き込んだ。言葉通り最小限にしてくれたらしい化粧は華美にならず、品よくまとまっている。

「エティは化粧も上手なのね。」

「そ、そうでしょうか。本当はもっとしたいのですが.....」

「これで十分よ。ありがとう。」

コンコン。

聞こえたノックに戸を開ける。

「支度は出来――――」

お忍び用に簡素な格好をしたレオが固まった。

顔を背ける耳が赤いのは気のせいだろうか。

ゆっくり顔を戻したレオはエティに目をやった。

「お前がやったのか?」

「は、はい!セラ様は元々お美しいですが、折角のお出かけですので!」

「よくやった。特別手当を出してやる。」

「本当ですか!」

エティに特別手当を出すのは賛成だ。何せ孤独な楽師の相手をしているエティもまた孤独だろうにそれを見せないのだから。だが何か理由がおかしい気がする。

「綺麗だ、セラ。」

顔を背け、赤くなるのは今度はセラの番だった。

後ろのエティまで顔を赤くしているからやっていられない。

「.....エティの腕です。」

「だから今褒美をやると言っただろう?お前は元から綺麗だが、化粧をするとよく映える.....これでドレスまで変えたらどうなるんだ?」

「.....どうもなりません。」

「商人が来るまでに試しておかないとな。俺が演じられなくなってしまう。」

「好きにしてください......」

耐え切れず口から出た言葉に後悔してももう遅い。

「言ったな?」

言質を取ったと言わんばかりのレオは勝ち誇った顔をしている。

もうなんでもいい。

「言いました。早く行きましょう。」

「ああ、行こう。」

逃げるように足を早めると反対に余裕そうな足取りのレオがついてきた。なんだかいつも転がされている気がして悔しくなった。


 

海デート、無事に楽しめるのでしょうか。

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