暴かれる楽の音
暴かれる楽の音
離宮へ向かう準備は慌ただしく進んだ。表向きは気まぐれな王弟が心身を疲弊し、音楽で身を休めるための滞在となっている。
「服や生活に必要な物は一式用意してあるからお前は特に何も持たなくていい。」
そう言われ用意した物は薬草ぐらいのもので、いつも通り仕事をこなしていた。
そんなある日のことだ。
朝仕事に向かうとアメリスが前から突進してきた。正確にはしてない。されると思っただけで。
「ちょっと!」
「何、どうしたの」
「貴女だったのね!」
「何が......」
「しらばっくれないでちょうだい!楽師よ!」
アメリスの甲高い声に周りの侍女たちが一斉に振り向く。
「いや、なんでそうなるの....」
「私、昨日眠れなかったの。そしたら殿下のお部屋から音が止んですぐ貴女が戻ってきたわ。それも楽器を抱えて!」
見られていたのか。昨晩弦の調子が悪かった。調整がしたいと持ち帰ったその日に出くわすとはなんという悪運の持ち主だろう。答えろと言わんばかりのアメリスと侍女たちの視線。逃げ場などない。
「あー......見てたの?」
「認めたわね!だから私は言ってたじゃない!」
「ごめんってば。言えるわけないでしょ。」
「貴女、なんで侍女なんかやってるの?楽師になれば楽でしょうに。」
「何もしないと落ち着かないのよ....」
「ほんと変わってるわね。私なら楽師になって毎日楽して暮らすわ。」
「いいと思うものは人それぞれよね....」
どうせ離宮に楽師として行けばそのうちバレることだったのだ。これでよかったのかもしれない。
周りの痛い目線にあんなに嫌だった楽師に早くなりたいとすら思った。




