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王弟の変化に揺らぐ邸内

「殿下は今日は早くお戻りになるかしら?」

「でも昨晩は遅かったわよ。」

「今まで誰が何を言っても夕飯までにお戻りになることなんて殆どなかったのに。一体どういう風の吹き回しかしら。」

「貴女達、口ではなく手を動かしなさい。」

「グレータ様!は、申し訳ありません!」

そそくさと仕事に戻る侍女たちを尻目にグレータは小さくため息をついた。

レオの戻りを気にしているのは侍女たちだけではない。レオの気ままな行動は今に始まった事ではないが、先週、今週と立て続きに早く帰ってきたことに屋敷はざわめいていた。

早く帰ってくるのはいいことだ。だが。

グレータには言いしれない不安の予感があった。

(あのような坊ちゃんの顔は初めて見たわ...)

彼が生まれた時から知っている。聡明で人と物事を見透かす彼は王族として産まれたことに辟易していた。

授業から逃げ出し、説教をしたくても学ぶべき内容を全て覚えて理解しているのだから怒ることも出来ない。

遊び回っているようで尊敬する兄王のために手を尽くしていることを知っているのはごく近しいものだけだろう。

表にいる彼は軽くしなやかに芸術を愛し、何故か民衆人気の高い王弟だった。

「殿下がお戻りになられました!」

やはり早かった。朝の様子から今日は早いのではないかと思っていたのだ。

「お帰りなさいませ、殿下」

「あまり驚いていないな?」

「朝から機嫌が良かったでしょう」

「流石は我が乳母だ。察しがいい。」

「まさかとは思いますが...女ではないでしょうね?」

「夕飯前に帰るなんて随分健全な女だな。」

「だからこそ聞いているのです。あんな顔で木箱を持っておられたら誰でも思いますよ。」

「まあそう急くな。兄王に迷惑をかけるような真似はしないさ。」

「それならばよいのです。」

「ああ。湯に入る。1人にしてくれ」

「承知しました。」

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