可憐な姪、聡明な甥、そして愛しいひと
可憐な姪、聡明な甥、そして愛しいひと
「伯父様!遅いですわ!」
「そう頬を膨らますな。可愛い顔が台無しだぞ?」
「もう、伯父様ったら....」
全く、6歳とはいえもう女の顔だ。セラもこれくらいの反応をしてくれてもいいのだが。
「ほら、結ってやる約束だっただろう?」
「そうでしたわ!この前伯父様が編んでくださったでしょう?とても好評でしたのよ!」
「そうか。それなら同じがいいか?」
「いいえ、今日は違うのがいいですわ。伯父様ったら、侍女より上手なんですもの。」
「侍女に言ってやるなよ....ドレスも可愛いな。新調したのか?」
「伯父様が来られると聞いて着替えたんですの。お父様が今度のパーティーのために買ってくださったのですわ。」
これを言ってしまうのが6歳の可愛いところだ。もし娘が出来たら――――
「伯父様?」
いけない。つい想像が進んでしまった。セラに似たら可愛いだろうなどと、まだ恋人ですらないというのに。
「ん?ああ、兄上が買ったのか。見立てたのも兄上か?」
「父様が一緒に考えてくださいましたの。初めてですわ。」
それは確かに驚きだ。ドレスだの飾りだのにはこだわりのない兄のはずだったが、娘にはやはり別なのだろう。
「余程ブルメリアが可愛いのだな、兄上は。」
「そうかしら?父様は普段お仕事ばかりで全然構ってくれませんわ。」
「心配するな。兄上はなんとも思っていない娘のためにドレスなんか考えない。」
「伯父様がそう言われるならなんだか安心しますわ。」
「ああ、安心しておけ.....出来た。」
「ステラ!鏡を持ってきてちょうだい!」
ステラと呼ばれた侍女が慌てて鏡を取りに行った。
「まあ!流石伯父様ですわ!皆に自慢しなくちゃ!」
「よく似合ってるぞ。俺はユラヌスのところに行く。またな。」
「もう行ってしまわれるのですか?」
「ああ。俺はそのパーティーには参加できないがドレスは見れてよかったよ。」
「伯父様は狡いですわ。私が伯父様と結婚できたらよかったのに....」
呟くブルメリアに胸が痛む。望む結婚などさせてもらえない。それが王女の宿命だ。
「お前なら俺よりいい男を捕まえられる。お前は誇り高い王女だ。忘れるな。」
「はい、伯父様。分かっていますわ。」
どんなにはしゃいで年相応の娘でも、答える彼女は立派な王女だった。
別れを告げ、向かったユラヌスはまだ鉱石のサンプルに興味深そうに触れていた。
「気に入ったか?」
「伯父様。何故これらの石の断面は形が違うのですか?」
「ふむ...難しい質問だが、そもそもこれらの石は出来た過程が違う。」
「過程?」
「そう。どうやって作られたかだな。お前やブルメリアだって、同じ親から生まれたが性別も、性格も違うだろう?石も同じだ。生まれた場所や育った過程が違う。それが中身を変えて、切った時に見える形が違うんだ。」
「なら、伯父様と父様も違いますか?」
「俺と兄上か?全然違うぞ。性格も似てない。顔は....少し似てるか。」
「私は、父様と同じ王になれますか?」
「....同じ王になる必要はない。お前はお前らしく王になればいい。お前は王になる資質をちゃんと持ってる。考え過ぎるなよ。」
これでまだ5歳。自分よりこの子の方が余程王だ。それに気づかない貴族連中の愚かさにはほとほと呆れてしまう。
「....はい、伯父様。」
「じゃあまたな。そういうのが好きならまた持ってきてやる。」
「ありがとうございます。」
こちらはブルメリアと違い、拗ねることも、引き留めることもしない。聡い王子はどんな王になるのだろうか。
子供達を見たからだろうか。無性にセラの顔が見たくなった。
『あまり呼び過ぎると他に示しがつきませんよ。』
あと少しだ。楽師にすればせめて好きな時に会える。
こんなことを知られればまた兄王に揶揄われてしまうかもしれないが。
愛しい人の顔を思い出しながら屋敷への道を眺めていた。




