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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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退屈な誕生日

いつも通りの屋敷の目覚め。グレータが口にした言葉に今日が何の日であったかを思い出す。

「おはようございます殿下、25歳のお誕生日、おめでとうございます。」

「....そうだった。面倒臭いパーティーとやらに出ないといけない日だな。」

「我慢なさいませ。お立場上、仕方のないことです。」

 いつも通り執務を終え、パーティー会場である王宮に向かう。

 外交、政治に絡むレオがこれを避けることは許されない。だが今日は心の底から気分が乗らなかった。

「お前も25か。そろそろ身を固めねばな。」

 兄王の余計な一言に群がる貴族どもを適当に相手をしていれば、ブルメリアとユラヌスがやってきた。

 このくだらない世界の中で彼らは唯一の癒しに見える。

「伯父様、おめでとうございます!これは私とユラヌスからのプレゼントですわ!」

「用意してくれたのか?」

「絵と手紙。それからお揃いの飾り紐にしましたの!受け取ってくださるかしら....?」

 不安気な姪はとても可愛らしい。

 紙にはブルメリア、ユラヌス、レオと思われる3人の顔が描かれ、[おじさま、だいすき]とまで拙い文字で書いてくれている。思わず緩んだレオの顔にブルメリアは笑顔になった。

「ありがとう。ブルメリア、ユラヌス。最高のプレゼントだ。」

「本当はもっといたいのですけど...お父様に長居してはならぬと言われておりますの。伯父様、また来てくださいな!」

「ああ。そうする。気をつけて帰れよ。」

 こんな大人どもの元にこんな純粋な子を置いていてはいけない。早く帰らせるのは賛成だ。しかしどうも子供たちの顔を見るとセラに会いたくなる。

 一通り挨拶も終えた。もういいかーーーー

「王よ、私は体調が優れません。明日の公務に響いてはいけませんので帰らせていただきます。」

「おお、そうか。まあ誰もお前に残ることなんぞ期待しとらん。好きにしろ。」

 早く、早く帰ってあの音に触れたい。そうすればこのざわついた心は収まってくれるだろうか。

「おかえりなさいませ。早かったですね。」

「ああ。セラを呼べ。」

「かしこまりました。」

 部屋で着替えてもどこか落ち着かない。誕生日なんてどうでもいい。だがそれでも今年は願うものがあった。

「お呼びでしょうか。」

 ざわついていた波が引いていく。それはさながら魔法のようだ。

「お疲れですか?あのようなパーティーは人も多く疲れてしまいそうです。」

「ああ。本当にやってられん。お前に癒されたくてさっさと抜けて来た。」

「私でお役に立つかは分かりませんが....」

「お前の顔を見るだけで癒される。誕生日なんてどうでもいいがお前の顔だけは見たかった。」

 セラの困った顔。優しいセラは何も言わない。

「.....あの。」

 何か意を決したようなセラ。

「お誕生日と聞いていたので、一応贈り物を...と思い用意してみたのですが。」

 硬い声で紡がれる言葉はレオが予想していなかったものだった。

「俺に?」

 セラがごそごそとポケットから取り出した。

「はい。香り袋です。大したものではないのですが、お守りがわりになれば.....と。いらなければ捨ててくださって構いません。」

 どうにも信じられない。セラは贈り物をするタイプに見えなかった。それも男に。言葉を失ったレオをセラは拒否と見做したようだ。

「....申し訳ありません、一介の侍女が、過ぎた真似をしました。」

「待て!違うから。お前が俺に贈り物をくれるなんて想像もしてなかった。嬉しくて信じられなかったんだ。」

「ご迷惑ではありませんか....?」

「迷惑どころか。人生で1番いい誕生日だ。これなら誕生日も悪くない。ありがとう、セラ。」

ホッとしたセラが笑顔になった。

「よかったです。」

 香り袋にはご丁寧にレオの印である鷲まで刺繍されている。手間をかけてくれた。そのことが何よりも嬉しい。

「刺繍、苦手なんじゃなかったのか。」

「だ、誰から聞いたんですか?」

「誰だろうな?頑張ってくれたのか?」

「.....いつもお世話になっている方への敬意です。大したものではありません。」

 強がるセラが思っている以上に苦労してくれたことはわかる。

「来年はお前のも祝うし、俺のも2人で祝うか。そしたら邪魔も入らん。」

「それは無理があるかと.....」

 ああ、なんだかとても。

 気分がいい。朝の憂鬱が嘘みたいだ。嫌いだった誕生日。1人の女がいるだけでこんなに愛おしくなるなんて。

「セラ、俺は本気だぞ。」

 セラはまた、困った顔をした。.

 

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