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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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その心はきっと、気まぐれ

薬師は断られてしまった。妙案だと思ったのに。何故最初に思い至らなかったのかと過去の自分を責めたところで今更だ。

あの時は弟のことで頭がいっぱいで、王都内で働けるならそれでよかったのだ。

『気を抜いておけ。優先しなくていい。』

出会った頃、川縁で話す友人のように接していたせいか、実はレオの前ではそれなりに気が抜けていた。そもそも友人のいないセラにとって、あれだけ気楽に話せた人物もまた初めてだ。そんな人が王弟だったと知って少しがっかりしたのは秘密だ。どんなに気楽でも優先しないは無理があり過ぎる。

甘えていいと、願いを口にしろとレオは言う。

人に、お願いなんて言葉を使ったのはいつ以来だろうーーーー

初めてだったかもしれない。記憶を辿っても思い当たるものがなかった。

レオに甘えてしまったら。お願いなんてしてしまったら。

ここから出られなくなる。貸しを作りたくはない。

セラを気にするのも、退屈な王弟の気まぐれだろう。

『セラ』

優しく名前を呼ぶ声も、きっと気まぐれだ。

言い聞かせた言葉に、納得したフリをした。

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