素性に手を伸ばす
「随分ご機嫌がよろしいようですが。」
ここ最近厳しい顔をしていることの多かった主が。セラ様絡みで間違い無いだろうが、悪いよりはいい。
「ああ、久々に悪くない。悪くないついでだ。クシェル。」
なんだか嫌な予感がする。この顔は何かを頼みたい時の顔だ。
「男が商人で、女が貴族で結婚、駆け落ちした例を20年前前後で調べろ。もし家系にスモーキーグリーンの瞳を持ったものがいれば特にだ。」
「セラ様ですか?」
「ああ。」
「何故商人と貴族だと?」
「セラが持っている知識は商人に教えられたものだ。教養、そして城の仕掛けに気づいたのも気になる。だが正式に結婚したにしては情報がない。駆け落ちの可能性が高いだろうな。」
「駆け落ちしていれば廃名されている可能性も高く難しいでしょうがね.....」
「あと商家で妻と子が脱走した例も併せて調べてほしい。10年前前後だろう。」
「脱走?没落ではなく?」
「セラの話に父親が一緒に旅した話は出てこない。名前は貴族家系なら言えぬとして....没落なら父親も一緒のはずだ。」
「なるほど。また骨が折れそうな.....」
「この件が片付いたら休暇をやる。ヴァルムベルクの別荘でも貸してやるから婚約者と行ってきたらどうだ?あそこは山のふもとで湖畔も近い。」
「本気ですか?」
「本気だ。俺が嘘をついたことがあるか?」
「数え切れません。」
「信じられないなら書状にしてやってもいいぞ。」
「結構です。お言葉を信じましょう。」
休暇の話は嘘でも本当でも、クシェルは命じられたことをやる。別に操り人形なわけじゃない。主の行動に、無意味なものはないと長年の経験から知っていた。
例えそれが主を変えてしまうとしても。
「他の仕事との兼ね合いはどうします?」
「他は俺が動く。そっちはあまり俺が大々的に動くと厄介だからな。お前がやってくれ。」
主から信頼されて嬉しくない部下はいない。
恭しく一礼をし、部屋を後にした。




