織り目に走る違和感
「セラって、本当に平民出身なの?」
隣で水を絞っていたエリシアに突然聞かれたのは、働き始めて1週間程経った頃だった。
「そうだけど...何で?」
「衣類の畳み方、姿勢、食べ方どれを取っても平民には見えないよ。実は貴族とかない?」
エリシアは商家出身と言うだけあって観察力がある。人との付き合い方、話し方を見ても何故彼女が庶民に近いながら王弟邸で人を教えられる程の立場になっているかが分かる。
「そうかなあ。母親が没落貴族でプライドが消えてなかったのよ。そのせいかも。」
内心冷や汗をかきながら答える。最初いた村では、大半を師と弟と生活していた。師は私たち家族の出自に何かあることを最初から勘付いていたが、何も尋ねなかった。村に馴染むためかなり癖は抜いたと思っていたのだが、衣類の畳み方など教えてもらった方法しか知らない。
「お母さんか...家族、今どうしてるの?」
「火事で死んじゃった。今は弟と2人だよ。」
「そっか....なんかごめんね。」
「ううん。エリシアは?兄妹とかいるの?」
「うん。私は長女だけど、兄が家を継ぐから私は働きに出たの。糸を売ってるんだけど家系は火の車。王弟邸に採用されたと聞いた時は心から喜んだわ。」
「元々はどこで働いてたの?」
「王宮で下働きをしてたわ。」
「ああ、私も応募するか迷った。」
嘘ではない。村を出なければと考え、王都内に入るためには1番現実的な方法だった。
「そうなの?それがどういう経緯でここに採用になったわけ?」
「ううん...たまたま殿下とお会いして、道を案内したらその褒美にと。運が良かったのね。」
これも嘘ではない。一応。話せば話すほど墓穴を掘っていく気がする。
「セラなら市で立ってるだけで誰かが見初めてくれそうだけど。でもそれじゃ落ち着かないか。」
「無理。手は動かしてないと。」
「うん。セラ見てたら分かった。」
エリシアは鋭いけど深入りはしない。グレータが信用するのも頷ける。
「さて、次行こっか。」
「うん。」
気づけば掃除を終えていた。




