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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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帰る場所

帰る場所は、ここ

強い、男だと思った。恐らく酷く傷ついていたはずだ。レオに当たったって、いいはずなのにそれをしない。

『お前の方が、余程心も広く誠実だ』

それは嘘じゃない。だからこそ、何故セラは自分を選んだのか、分からなかった。

部屋に戻り湯浴みを済ませるとドアがノックされ、セラが入ってきた。

「セラ……」

言葉もなくセラが抱きついてくる。余程こたえたらしい。

背を撫でていると、泣いているのが目に入った。たった数日でセラを泣かせるとは。あと1週間あれば本当に危なかったかもしれない。

セラは、何も言わない。ただ、その存在を確かめるかのようにしがみついて離れない。

「セラ」

呼ぶと涙の流れる顔が上がった。

「……酷い顔だ。」

「……こんなに、痛いと私も思っていなかったのです。」

「……オルヴェインの時とは違ったか?」

「オルヴェイン様は、ただ私を美しいと思っていてくださったように思うのです。でもアラリック様は私自身を見てくださっていました。」

「……俺が聞くのもなんだがアラリックじゃなくていいのか?」

「……それは……ダメです。私は、レオ様でないと。」

「お前俺に洗脳されてないか?」

「もう、何故そんなに弱気なのですか……だって、レオ様の隣だけなのです。私が安心して、笑って、甘えられるのは。」

セラの言葉は本物なのに今日はどうしたって自信が持てそうになかった。

「……正直アラリックの方が心も広いし誠実だ。地位も今やあいつは王になった。どう見ても優良物件だ。」

「レオ様は、私にアラリック様を選んで欲しいのですか。」

「そんなわけないだろう。……ただ、何故お前が俺を選ぶのかが少し、分からなくなった。」

「……やっとレオ様も私の気持ちが分かりましたか。」

「……そうだな。」

「レオ様がいつも言うでしょう?私が何故私なのかと聞いたらただ私がいいからだと言うのが私には未だに理解できません。でも、やっと愛されているんだと言うことは分かってきたのです。」

「……それはいいことだ。だからお前も同じだと?」 

「はい。確かにアラリック様は落ち着く方でした。でもアラリック様に触れられたいとは思わないのです。」

「……俺だけか?」

「はい。レオ様だけです。キス、して欲しいのも、抱きしめて欲しいのも。」

「……なら期待に応えないとな。」

抱き締めて、キスして。君が触れて欲しいと望んでくれるなら。

「レオ様……愛しています。」

 きっと、彼女も不安だったのだ。誰かに気持ちを揺さぶられて、帰る場所が揺れていては不安になる。

「……セラ、愛してる。心配するな。俺は、お前だけだしお前をこれ以上疑ったりしない。」

ほっとしたセラを見てこれでよかったのだと思う。

残る仕事はあと一つ。交易権を得れば、正式に婚約ができる。

「セラ、あと少しだ。先帰って待ってろ。」

「はい。待っています。必ず来てくださいますよね?」

「ああ、勿論だ。部屋に戻れ。」

「お休みなさい、レオ様」

あれ程傷んでいた胃の痛みはいつの間にか止んでいた。

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