去りゆく恋と、残した友情
去りゆく恋と、残した友情
「……さて。」
1人、呟く声は風に乗って消えた。
初めての恋は数日で潰えた。それでも後悔はない。あんな感情を、恋と呼ぶならば。願わくばもう少しだけ、側で見ていたかった。ただ、それだけだ。
そしてその恋敵との晩餐会。きっと、緊張しているのはアラリックだけではないだろう。
「晩餐会のお時間です。」
連れられ卓につくと少しの後、レオが入ってきた。
「……」
「……」
流れるのは予想通りの気まずい沈黙。
レオが、重い口を開けた。
「俺は、この気まずいのには耐えられん。お前がセラに惚れたことぐらい知っている。本来なら俺は嫉妬で狂っているが相手がお前だ。俺の女でなければ喜んで応援するところだったのに。よりによって……」
いつも人を転がす嘘ばかり吐く癖にこう言う時は馬鹿みたいに正直なこの友をどうしたって嫌いになれなかった。
「全くだ。エルナもお前も早くに教えてくれればいいものを。俺はお陰で痛い思いをした。」
「エルナが言ってると思ってたんだ。そしたらまさか……お前、セラに何か言ったのか?」
「贈り物をしようとしたらあまりに困った顔をするからな。誰か想う人がいるのかと。」
「……で?」
「なんだ、傷を抉るつもりか?見事に振られたよ。泣きそうな顔して友と諍いになって欲しくないなんて言われたら流石に察したさ。」
「……あいつが泣くなんてよっぽどだぞ。」
「そうなのか?せめてもの栄誉ということにしておくよ。」
「……コアルシオンとの交易権も俺の私情だ。それが得られなければ結婚は承認できないとセラの父に言われてな。」
「そんなこと言われたら許可したくなくなるだろ。お前なんでそんな馬鹿正直なんだよ。」
「……俺は、お前の幸せを願ってたんだ。それがこんな形になった。正直にぐらいならせてくれ。」
「はぁ……だから俺はお前を嫌いになれない。交易権の件なら心配するな。仮にも一国の王だぞ?利益になると判断すれば承認するさ。この滞在期間中にやり切らないといけないんだろ?急がないとな。」
「……お前の方が余程心も広く誠実だ。」
「でも俺は振られたんだ。彼女に必要なのはお前なんだろ。やめろよ。俺に慰めさせるな。」
「分かった。もうこの話はここで終わりだ。それでいいか?」
「ああ、いい。今まで通りにしろよ。気持ち悪いから。それから名付け親にぐらいならせろ。」
「それなら喜んで任せよう。」
これでいい。この友を、数日の恋で失いたくない。そしてこの恋は、綺麗なままで。脳裏に残るその人の顔を、明日、笑顔で見送れるように。そして、その先の人生を彼女が友と共に笑顔で歩めるように。
友との晩餐は、平穏に終わった。




