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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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183/209

話したかったこと

話したかったこと。

「しかし聞いてみたかったんだがお前はどういう生まれなんだ?ただの令嬢じゃないだろ。どう見ても。」

 そう。エルナは気になっていた。知識や教養は名家の令嬢だが医療の知識、発想や馬術に剣術となると流石にただの令嬢では済まない。

「まあ話せば面倒なのですが……ベルシュタイン家の令嬢だった母と、商人の妾の子だった父との間に生まれたのが私です。」

「なるほど。しかし駆け落ちしたんなら戻れないんじゃないのか?」

「父の暴力が酷く、身体の弱い弟が危険な状態だったため家を出ることを母に進言しベルシュタイン家に戻りました。ベルシュタイン家には娘がいなかったのでそこを交渉材料に使い。」

「……それ何歳の時の話だ?」

「11です。足が怖くて震えていました。」

 滅茶苦茶だ。11の子供が思いついたからと言って本当にやることじゃない。

「……そこからずっとベルシュタインにいるのか?」

「……いえ。実は母が兄……ベルシュタイン家の長男です。を暗殺しようとしまして。激怒した私は母と弟、妹を連れてベルシュタイン家を出ました。」

母親を突き出さなかったのは弟を思ってのことだろう。

「で?どうやったらそこからレオに会うんだ?」

「2年、同じ村に暮らしていたのですがそこでも問題が起きて一人旅になりまして。村に滞在しながら市に出てハープを弾いていたらレオ様に声をかけられました。」

「そういうことか……中々波瀾万丈だな。」

「まあ自ら事を起こしている部分もあるので……エルナ様は?何故軍人になろうとお思いになったのですか?」

「ん?私か?私は……父は昔はあんな人じゃなくてな。」

「この国の英雄だったと聞きました。」

「ああ、そうだ。私の目にも英雄だった。戦から帰ってくる父を見て幼い時に決意した。私は軍人になるとな。だが皮肉にも軍人になった時には父は腐敗していた。」

「……お父上は見ていらしたのでしょうか。」

「……見ていたそうだ。あの戦の後、呼ばれてな。見ていて苦しかったと、言われたよ。」

「子供の目には、大人は大きく見えます。ですが大人というのもまた小さな1人の人間なのでしょうね。」

「そうなのだろうな。」

強い意志を持った目。この若さで何かを悟ったような静けさ。レオやアラがこの娘に惚れるのも分からなくはない。

さて、このままエルナとばかり話しているわけにもいかないだろう。前の男2人。1人は張り詰めた、1人は穏やかな対比を面白がっている場合ではない。

「……なあセラ。アラをどう思う?」

「アラリック様ですか?誠実な、優しい方です。真面目で素直なのに、どこか騙すことはできない。レオ様が敵わないタイプでしょうか。」

「よくこの短時間で分かったな。……私はアラにも幸せになって欲しいんだ……アラ。」

「なんだ?」

「場所、変われ。」

「もうセラとは話さなくていいのか?」

「話したかったことは話せた。次はレオだ。」

「……?そうか、分かった。」

物言いたげなレオの文句ぐらい聞いてやろう。

8年間、苦しんできた兄へのささやかなプレゼントだ。

慣れ親しんだ街へまた、一歩を踏み込んだ。

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