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その手は、自分だったはずなのに
その手は、自分だったはずなのに
手を、差し出すのは自分のはずだった。ドレスを褒めるのも、甘い顔をするのも。何故、それを自分の友がやっている。セラも照れたりはしていないものの素直にその好意を受け入れている。その手を、振り払って欲しかった。そんなこと、無理な願いだと分かってはいても。
セラが剣を振り回すなど軍国コアルシオンの王にとっては些末なことだろう。
友が、恋人に惚れて行く様子を横から見る地獄は思った以上に心を刺してくる。
「レオも街は久しぶりだろ?」
「ああ。子供の時以来かもな。」
「随分変わってる。楽しみにしててくれ。」
アラは、素直だ。素直なのに、レオの軽妙な嘘を信じない。きっとこれだけ苦しいのはアラにはどこか敵わないと感じている部分があるからに過ぎない。もしセラがアラの魅力に気づいてしまえば――――
王弟と隣国の王。立場で言えば最早アラの方が上なのだ。
新しく変わった街が、レオには魅力的に見えなかった。




