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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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胃痛と視察と、余計な距離感

胃痛と視察と、余計な距離感

来てほしくなかった朝が来た。重すぎる身体を持ち上げ、支度を始める。今日の視察は午前中は軍事施設のためレオだけだ。どうせアラリックが案内してくれるなら交易権の話もできるだろう。

「レオポルト殿下、ご案内致します。」

案内人によって軍事施設まで歩くとそこには既にアラリックが待っていた。王となった彼には早くも風格が現れており、以前とは違う。

「来たか。まあ前回も見ただろうけどな。違いを見てくれ。」

「前回はな……まあお前の国を悪く言うのもなんだからな。」

「構わないぞ。本当に酷い有様だった。はら、ここが演習場。」

「前回来た時はまるで見せ物のようだったが今回は本物だな。」

「当たり前だ。で、兵站庫。」

ここも前回のような違和感は消えている。

「なあ、交易権の件なんだが……」

「ああ、文にも書いていたな。そのことなら俺も前向きだ。今日の夜にでも話して滞在中に話を進めよう。」

「助かるよ。」

「ところで昨日セラが迷子になりかけてたんだ。」

「セラが?」

「少し顔を赤くして。部屋まで送ったんだが今日の視察は大丈夫だろうか?」

部屋まで送らなかった後悔をしたところで遅い。何でこんなタイミングよく合うんだこいつらは。

「……大丈夫だろう。」

「それならいいんだけど。よく迷子になると言っていた。少し危なっかしいな。」

そう言ったアラリックの表情も、心情もきっと誰よりも知っている。言ってしまうべきか――――

「アラ!レオ!」

演習中のエルナがこちらを呼んだ。

「エルナ!邪魔してもいいか?」

「ああ!降りて来いよ!」

呼ばれておりて行くとエルナの隊は中々にハードな訓練をしているようだ。流石この国随一と呼ばれる隊なだけある。カルディアにこの攻撃を受け切れる軍がいるのか……

「もう軍事施設は終わりか?」

「ああ。レオは一度見てるしな。軽く見せる程度だ。」

「なら昼からは街と王宮内だな。私も支度するからどこに行けばいい?」

「城門でいいだろう。先に街に行く。」

「了解した。」

「じゃあレオ、俺たちも一度昼食を取って集まろう。後でな。」

「ああ。」

迷いが、胸を行き来する。伝えればアラリックは傷つくだろう。それに交易権の話にだって前向きになってくれるかも分からない。だがこのまま話さずにいるのも不誠実な気がした。

「はぁ……」

「頭の痛いことですね。」

「覚悟しろ。昼からはもっと頭の痛いことになる。」

「私よりご自分の心配をなさった方が良いのでは?」

「……それもそうだな。」

盛大に、ため息をついた。

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