初めて知る、この胸の感覚
初めて知る、この胸の感覚
『私、迷子には定評があるのですよ。』
そう言って困ったように笑う顔。少し赤く見えた顔の理由が知りたい。誰か君にそんな顔をさせる相手がいるのか。
心が落ち着く――――
それは嘘じゃない。彼女と話していると、一瞬だけ、感じている重圧を忘れられる気がする。
去り際、一瞬触れたいと思ってしまった。この気持ちはきっと――――
こんな気持ちとは無縁の生活をしてきた。それが王になった途端、芽生えてしまうなんて。
明日、君はどんな顔を見せてくれるんだろう。
また、笑った顔が見たい。思い出した顔に心が静かに揺れるのを感じながら、眠りについた。
(やっちまった……)
エルナは頭を抱えていた。
晩餐会の時は友人の顔がつい面白くて笑ってしまったのだが冷静になると笑っている場合ではない。
『エルナ、あの時微かに聞こえていたんだが真相を暴いて助けてくれたのは誰だったんだ?』
『ああ、カルディアのベルシュタインの娘だ。利害が一致してな。短時間だが共に動いた。頼りになる。』
『そうか。なら今度呼んで礼をしないといけないな。』
特に何か特別な想いがあるようには見えなかった。それもあってわざわざレオの恋人だと言うのも野暮だろうと思ったのだが。
自分の考えの甘さに気づいたのはセラが部屋に入ってきた時のアラリックの目を見た時だった。
どう見てもこの一瞬で惚れてしまったであろう兄弟にその様子を見て胃を痛めている友。
報われて欲しい。そう、思ってしまった。だがその願いが叶うことはない。
ならばせめてその責任を持って見届けるぐらいはしよう。
そして、いつか良縁に恵まれることを祈ってやることぐらいは。
(あんな顔は初めて見たな……)
恋とは無縁で生きてきた兄弟の、叶わぬ初恋。
一人見えている行く末を思い、ため息を吐いた。




