悟ってしまった侍女、知らぬ王弟
悟ってしまった侍女、知らぬ王弟
なんだか恥ずかしい。レオが、不安そうに見えたのだ。それでつい頬にキスをして出てきてしまったのだけれど……
「セラ?」
「アラリック様……」
「大丈夫ですか?顔が少し赤いようです。熱などは?」
「ありません。少し火照ってしまったようです。」
こんな季節にどんな言い訳だ。アラリックの誠実な目が痛い。
「部屋まで送りましょう。ここで迷子にでもなったら大変だ。」
「私、迷子には定評があるのですよ。」
「おや、そうなのですか?冗談のつもりだったのですが。」
「お屋敷もお城もいつも迷ってばかりで侍女を困らせているのです。」
そう言うとアラリックは楽しそうに笑ってくれた。笑った顔は、初めて見た気がする。
「セラは面白いですね。貴女と話していると心が落ち着きます。」
何か、違和感がよぎった。そんなはずないと違和感を奥に押し込める。
「私は話も上手い方ではないので、そう言っていただけると嬉しいです。」
「そんなことはないですよ。セラはそのままで十分だ。……さあ、着きました。また明日。」
「はい。おやすみなさい。」
アラリックを見送っていると中からアシュレイが出てきた。
「セラ様!やっとお戻りに……ってあの方はこの国の王ではありませんか!?」
「ええ、そうよ。部屋まで送ってくださったの。」
「え、それは……その、王弟殿下はご存知で?」
「いいえ、知らないわ。レオ様のお部屋から出てきたところで会ったのよ。」
「そ、そうですか……」
何故アシュレイはこんなに気まずそうなんだろう。アシュレイに何かあったわけでもないのに。
「どうしたの?中に入っていいかしら?」
「は、はい!お湯浴みの準備ができております。入られますか?」
「ええ。ありがとう。」
湯浴みを終え、少しだけハープを弾いてみる。
「いつ聴いても心休まりますわ……これだけでもセラ様の侍女になった価値があるというものです。」
「私にはサリアの声の方が癒し効果が高いと思うのだけど。」
「明日は視察に行かれるのですよね?確か王弟殿下もご一緒に。」
「ええ。それからエルナ様も同行されて、アラリック様が案内してくださるそうよ。」
「アラリック様というとまさか現王では?」
「ええ。朝お礼とお詫びをいただいた時是非にと。」
「そうですか……私は王弟殿下に同情します……」
明日の行く末を思い、アシュレイは1人嘆いていた。




