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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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アラリックという青年

アラリックという青年

鈍く響く頭と共に目が覚める。見渡すと自室のようだ。

 (あれ、何で私.……)

 ふと、蘇る昨晩の記憶に血の気が引いていく。

(やらかした……)

レオの顔がしばらく見れそうにない。朝の支度をし、思い出すアラリックの言葉。

 『明日の朝、人をやります。個人的に、礼が言いたいのです。』

その言葉の通り、朝人が来て案内してくれた部屋はアラリックの私室の応接間のようだった。

「こちらでお待ちください。」

案内人が去りしばらくするとアラリックが入ってきた。

 戴冠式の時とは違う、1人の青年の顔をしている。真面目なのに、どこか熱を帯びた瞳。この瞳があるからレオと仲良くやれるのだろう。

「お待たせしてしまいすみません。」

「いえ、来たばかりですので。」

「いきなり呼ばれて驚いたでしょう。個人的にどうしても礼と詫びをしたかったのです。」

「……私は大したことはしていませんよ。」

「いいえ。あの時貴女が真相を暴いてくれなければ私は殺されていました。私に薬を飲ませてくれたでしょう。声と、目が忘れられませんでした。」

「こちらこそ無断でコアルシオンに潜入したのです。咎めずにいて下さったことに、礼を申し上げねばならぬのは私の方かもしれません。」

「私のことだけではありません。アンツェルーシュに命を狙われたのでしょう。それも1度ならず2度までも。お怪我もされたとか。今は治っていますか?」

「痕は少し残りましたが大した傷ではありません。お気遣い、ありがとうございます。」

「ああ……本当ですね。折角の綺麗な肌なのに……本当に申し訳ありません。」

この新王は本当に誠実なようだ。いくら他国の令嬢とはいえここまで気を遣う必要などないのに。

「お気になさらないでください。アラリック様こそ、もうお身体の方は良いのですか?ヒ素であればかなり苦しい期間が続いたでしょう。」

「確かに戦を止める時は冷や汗が止まりませんでしたが……父が最後、奮い立ってくれたお陰で休むことができました。今はこの通り、元気なものです。」

「それはよかったです。」

「明日は視察に行かれるとか。よければ案内いたしましょうか?」

「いえ、そこまでしていただく必要はございません。王弟殿下も一緒に来てくださるとのことですので。」

「レオですか?レオなら私も仲が良い。話はつけておきます。せめてもの詫びだ。案内させてください。」

「アラリック様がそう仰られるのであれば……」

怒るレオが目に浮かんだが流石のレオも友であるアラリックならば納得するだろう。

「では、また明日に。それからこちらはほんの気持ちです。」

 そう言って差し出されたのは金の箱。中に入っているのは……

「……これは、コアルシオンの宝石では?」

「ええ。こちらを是非。今着ておられるドレスにも似合うでしょう。」

「このようなもの……私には不相応です。」

「何を仰られるのです?貴女ほど相応しい方はいない。是非、持ち帰ってください。」

「……では恐れながらお受けいたします。」

「ええ。私はレオの友人です。エルナとはもう少し気楽に話しているのでしょう?王だと思わず気楽に接してください。」

そう言われてもあんな宝石やら礼やら言われてはそれも難しい。

「……ありがとうございます。」

「こちらこそ。……そういえば、何とお呼びすればよいでしょう?」

「セラと皆呼ぶのでアラリック様もそれで構いません。」

「分かりました。ではセラ。今日の夜の晩餐会で会いましょう。」

 王族にしては珍しい澄んだ目を持った人。誠実な響きを持つ声。レオが好きになるのも、わかる気がした。

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