月明かりの戴冠式前夜
月明かりの戴冠式前夜
王宮をウロウロと歩いていると好奇の目が向けられる。実際あまり良くないことかもしれない。なんとか早くにレオの部屋を見つけなくては。
「あれ、セラ様?」
後ろから聞こえてきた聞き馴染みのある声に笑みが溢れる。
「クシェル様!」
「こんなところでどうされたのです?殿下をお探しですか?」
「そうだったのだけど、クシェル様でも知っているならいいわ。エティがどこにいるか知りませんか?」
「ああ……エルナ様の元にいるはずです。主の部屋ならすぐそこですので呼びに行きましょうか。」
「お願いします。」
クシェルが部屋に入り、レオを呼ぶとそれは凄い速さでレオは出てきた。
「お前1人で王宮内をウロウロして……!」
すっとアシュレイが前に進み出る。
「ご安心ください。私がついております。」
「ああ、ベルシュタインの侍女か。それなら安心だが。」
だから皆人をなんだと思っているのだ。確かに迷子にはなるけれど。
「で、どうしたんだ?」
「エティの居場所を知りたいのですが……」
「ああ、それなんだがな……」
非常に言いにくそうなレオ。まさかエティがここに住みたいとでも言い出したのか。
「エティにとってそれが幸せなのであれば……」
「は?お前何言ってるんだ。エティは帰りたがってるぞ。」
「ではなんなのです?」
「お前がエティを連れ出したところでお前の部屋には入れないんだ。侍女は2人までだっただろう?」
その通りだ。だからアイルを置いてくるハメになった。
「だから行ったところで別行動だ。その上ベルシュタインには連れて帰れん。だから俺の方で預かって連れ帰ることになっているんだ。」
「そうなのですか……」
「そう落ち込むな。帰ったら侍女教育を1から受け直させる。立派な侍女になると意気込んでいたぞ。」
「そうなのですか?それなら……顔だけ見ても、迷惑でしょうか。」
「そうだな……エティも他の侍女といるお前を見るとやる気の問題に繋がるかもしれないだろ?だから次会う時の楽しみにしておけ。」
「はい、分かりました……」
「大丈夫だ、セラ。中に入るか?」
「いえ、大丈夫です。今日は戻ります。」
何となく、クシェルもアシュレイも見ている前で部屋に入るとは言いづらかった。少し残念そうな顔のレオを置いて、部屋に戻る。
「残念でしたね。セラ様。」
「仕方ないわ。王弟殿下の言う通りでもあるもの。」
「もう夕刻です。明日は戴冠式ですし今日は早めに湯浴みをしてお休みになられた方が。」
「そうね。そうするわ。」
戴冠式なるものに参加するのは初めてだ。別に戴冠される本人でもないのに緊張する。
「大丈夫です。戴冠式は基本座っているだけですので。」
「そうなのだけどね。何事もなく終わることを願ってるわ。」
新しい王の顔を思い浮かべても青白い顔しか思い浮かばない。明日は力強い顔が見れるだろうか。
窓から見える夜更けの月は仄かな灯りを室内に落としていた。




