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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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平穏な日常と戴冠式のお誘い

平穏な日常と、戴冠式のお誘い

王都に行くと言っただけだというのにセラが既に死地に何度も行ったせいか侍女たちの出迎えは仰々しかった。

「セラ様!お帰りなさいませ!」

「セラ様、ご無事で……」

「セラ様!お菓子はよろしいですか?」

「私は何も戦争に行ってきたんじゃないのよ……?」

「セラ様から目を離すとロクなことが起きないと学びました。」

「書庫に入って本を読み始めたら返事がないし……」

「目を離した隙に迷子になることもしばしば……」

侍女たちの視線が痛い。どれも真実なだけにぐうの音も出なかった。

「わ、分かってるけど……」

「セラ様ー!エルシウス様がお呼びです!」

「エルシウス様が?すぐに向かうわ。」

向かったエルシウスの部屋に入るとテーブルの上には一通の手紙が置いてある。

「エルシウス様、お呼びと聞きました。」

「ああ。実はコアルシオンの第二王子からお前宛へ招待状が届いた。」

「招待状ですか?」

「2週間後の戴冠式にだそうだ。」

「2週間後ですか。それはまあ急な……」

「向こうも事情が事情だろうからな。文には王自ら宰相の非を詫びたいと書いてある。参加して来い。」

「分かりました。」

「……コアルシオンの王相手でも悪くはないがな。」

 どう言う意味かは聞かないことにしておこう。しかし2週間後とは。式の準備は恐ろしく忙しいはずだ。それをあの病み上がりの身体で行っているとは……

殆ど話したことのない御仁だが健康を祈らずにはいられない。

レオも招待されていることだろう。次会うのはその時か。今は仕事に忙殺されている姿が目に浮かぶ。

「改めて作法を叩き込んでおけ。粗相のないように。」

「承知しました。……エルシウス様、一つ伺っても?」

「なんだ?」

「エルシウス様は、書庫にあった古文書についてご存知でしたか?」

「古文書?書庫の整理なら年に一度ほど行うが……そんな物はなかったはずだが。」

「そうですか……」

「それが我が書庫にあったとでも?」

「はい。それがきっかけでアイルデールの錬金術の可能性に気づいたのです。」

「ふむ、奇妙だな……整理したのは丁度3ヶ月ほど前だ。その間に何者かが差し込んだと……?」

「分かりませんが、その可能性はあります。」

「分かった。この件はまた考える。お前は戻れ。」

「はい。失礼します。」

書庫の整理は3ヶ月前に行われた。とすれば置かれたのはその3ヶ月の間……コアルシオンも似たような物だろう。でなければ誰かの目に触れていたはずだ。  

だがアイルデールだけは早くからそれを手にしていた。  

一体なぜ――――

「セラ様?」

「エルシウス様が何か仰られたのですか?」

「あ……いいえ、コアルシオンから戴冠式の招待を受けたわ。」

「戴冠式の!それはすごいことですよ!」

「恐らく王は個人的に宰相の非を詫びたいのでしょう。私も事の顛末は知りたいから行くことにするわ。」

「侍女はついていけるのでしょうか?」

「1人か2人はついてこれるはずよ。来るなら……アシュレイとサリアかしら?」

「わ、私は……」

アイルが泣きそうになっている。

「ごめんね、3人行ければ良いのだけど……必ずお土産買って帰ってくるからね。」

「うう……楽しみにしております……」

「エルシウス様が戴冠式までに作法を再度しっかり叩き直せとのことよ。またアシュレイ先生にお願いしなくちゃいけないわね。」

「お任せください!」

意気込むアシュレイと嘆くアイル。それを後ろから見守るサリア。平穏な1日が更けようとしていた。

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