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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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余韻を残した帰路

余韻を残した帰路

観劇場に行けば舞台の正面、斜め上にあるボックス席に案内される。滅多に来ることのない観劇だが静かに見たいレオにとってはこの席は正直ありがたい。セラとしても同じ思いなようで最初こそ緊張していたものの席に腰を下ろすとホッと胸を撫で下ろしている。

観劇は戦記ものの英雄譚だった。鎧の実用性などについ目がいってしまうレオも段々と引き込まれて演目を楽しんだ。隣のセラは観劇が思ったよりも気に入ったようで引き込まれるように魅入っている。殺陣演技も思ったよりも悪くない。終わる頃にはまた来るのも悪くないかと考えを改めていた。

「面白かったですね!」

「楽しんでたな。あんな内容が好みか?」

「今日のは迫力もありましたし殺陣なども細やかで面白かったですが、他も見てみたいですね。」

「ならまた来よう。俺も楽しんだ。」

「レオ様は何が面白かったんですか?」

「今日のは演技が良かったな。つい引き込まれた。最初は鎧に実用性がないとか考えていたのにな。」

「鎧の実用性って……観劇に求めるものなんですか?今日の役者さんは確かに上手でしたね。」

「気になるタチなんだ。お前も役者をやれそうだけどな?」

「私が?とんでもない。私は本場で結構です。」

「それもどうなんだか……俺はお前の名優っぷりを忘れてないぞ」

「どうぞ快くお忘れください。……あ、ところで。」

「どうした?」

「これも聞こうと思っていたんですが、エティはどうなったんです?」

実は恐れていた、この質問を。

「…………怒らないか?」

「……善処しますが……」

「……実はな、コアルシオンに置いて来てしまったんだ。」

「は!?」

「いや、初日からアマリエルに誘惑され警戒心が強くなってな。人を出来るだけ入れないようにしていたんだ。そしたらそこにいきなり戦の報で急に脱出しないといけなくなった。気づいた時には後の祭りでな……今はエルナが面倒を見てくれているらしい。済まん……」

セラは何やら百面相をしている。怒りたいが事情もあるし怒れないでも……と言ったところだろうか。

「……怒ってもいいぞ。」

「……では、少しだけ。わざとではないですよね?」

「ない。断じてない。」

「エティをずっと放置したりは?」

「コアルシオンに着く前の馬車で話した。余程覚悟を持ってお前に仕えたいと言うから帰ったらグレータにつける予定だった。それからコアルシオン内ではセラとの関係を悟られぬよう名前は絶対に出さず影のように生きろとは言った。」

「……分かりました。では私は怒れません。」

「本当か?怒らなくていいのか?」

「レオ様はエティを無下にせず話してくださったんでしょう。いきなり戦と言われて侍女のことまで頭が回るわけがありません。ましてや連れて行ったところで足手纏いでしょう。置いてきた方が安全だったかもしれません。」

「……お前の寛容さに俺は救われている。」

「お互い様です。しかし……私もコアルシオンに行けないでしょうか……」

「そうだな……案外誘いが来るかもしれないぞ。」

「期待せずに待っています。」

「そうしろ。王宮まで送るから。」

「レオ様は?」

「俺は本邸に戻る。仕事しないとクシェルが死ぬからな。」

「クシェル様にはくれぐれもよろしくお伝えください。」

「伝えておこう。」

次、こうやってデートに出られるのはいつだろう。早く、早くと急く気持ちをいつまで抑えればいいのだろう。

「またな、セラ。」

帰り際のキス。短くて、名残惜しい。

「レオ様も。無理なさらないように。」

心配してくれる声。もうすぐだ。もうすぐ、その声も全てが俺のものになる。

歩き去る後ろ姿を見えなくなるまで見送った。

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