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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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甘いひととき、終わらない謎

甘いひととき、終わらない謎。

「なんだか疲れました……」

「悪かったな。俺が見たかった。少し休むか。」

向かったのはティーサロン。セラが望む休むとは少し違うかもしれないがこの姿で休める場所などここが限度だ。

レオの姿を認めた受付係の背筋が伸びる。

 他の客たちの視線が一瞬こちらを向き好奇の意を含んだ後下げられる。

「いらっしゃいませ。奥の席にご案内します。」

案内されたのは半個室のような奥まった席。

店員に渡されたメニュー表から気に入った物をいくつか選ぶ。

「季節の菓子プレートでございます。」

運ばれてきたのは様々な小菓子が乗ったプレート。恐らくは王族用のサービスだろう。

気後れしていたセラの目が、菓子を前に輝いている。

「お菓子!」

「お茶がもう来るから待て……な?」

「はい……」

 しゅんとしたセラは控えめに言ってとても可愛い。

 茶が運ばれて来ると嬉々としてセラは菓子に手を伸ばした。

「レオ様はどれがお好きですか?」

「俺はいいからお前が好きなの食べろ。」

「ではこのタルトを……んんっ美味しい!」

 この顔を見るとしばらく嵐のようだった日々に少しの平和が戻ってきたのを感じる。もっともレオは今日無理矢理休みを取ったので明日からは地獄の仕事だが。

レオもアーモンド菓子に手をつけてみる。確かに美味しい。

気づけば半数の菓子はセラの胃の中に収まっていた。

「お前本当に腹の構造どうなってるんだ……」

「お菓子ならまだまだ入りますよ!」

「心配しなくてもまだ来る。安心してろ。」

「はい、楽しみです。ところで……あの、ここって誰にも聞こえてませんかね?」

「まあこの距離なら大丈夫だろう。どうした?」

「アマリエル様はどうなったんです?アンツェルーシュのことも聞きたかったのについ忘れてしまったんですよ。」

「俺もだ。お前の顔見たら嬉しくて飛んでしまった。アマリエルならこちらに寝返りアンツェルーシュの宝石偽装ビジネスを暴くのに一役買った。今は……どうしてるかは分からんが安全な場所にいるはずだ。俺たちはアンツェルーシュを詐欺罪で捕まえた瞬間に戦が始まっている報せを聞いた。」

「なるほど……しかしよくアマリエル様を説得できましたね。」

「まあ……お前のおかげだな。」

「私何もしてませんけど?」

「……人にはそれぞれ望みと守りたいものがあるということだ。」

「なんか綺麗にまとめましたね。」

「そっちこそどうなんだ?北の森で何があった。」

「こちらは見事に誘い出されてくれたのですが、最初矢で狙われまして。」

「当たってないだろうな。」

「掠りました。ご丁寧に毒付きで。大したものではなかったので動けましたけどね。それより。」

「それよりじゃないぞ。」

「まあまあ。それより囲んできたアンツェルーシュの刺客は無事捕まえられたのですが突如後ろからアイルデールが剣を振り下ろしてきまして。イザーク様がいなければ少し危ないところでした。」

「アイルデールが近くにいるとは思っていなかったからな……しかしよく考えたら狐がそこに出ると言われているんだから当然のような気もするが。」

店員が向かって来るのを見て口を噤む。

「アーモンドタルト、クッキー、フルーツの蜜漬けにケーキでござきます。」

店員が去るのが待ち遠しくて堪らないセラがウズウズしているのが目に見える。

「本当に美味しい……私が令嬢になって1番嬉しいことは菓子を食べる権利をいただいたことでしょうか。」

「それは本当によかった。……で、その狐を見たとか?アイルデールが騒ぎ立てていたらしいな。」

「そう、それなんですが……狐が、喋りまして。」

「喋った?」

「私もちょっと信じられなかったのですが、私をずっとあの地から見ていたと。今は蘇りの力は土が正しいエネルギーを失ってなくなったが喋る力と見通す力を残っているのだと。」

「伝承は本当どころじゃなかったな……お前の祖先は何者なんだ?」

「ベルシュタインの方だと思うのですが……母も伝承のことは知っていたようですし。でも母は気味悪がっていました。その狐のことを」

「何故だ?伝承通りなら縁起がいいはずだろう。」

「そうなんですよね……それが謎で。」

「謎と言えば古文書もだな。失われたはずの古文書がコアルシオン、ベルシュタイン、アイルデールにあるなんてのもおかしな話だ。」

「……なんだかスッキリしませんね。」

「ああ。まあ一旦のところは落ち着いた。食べろ。しんみりしに来たんじゃない。」

「そうですね……っ!このタルトも絶妙!」

たらふく菓子と茶を楽しんで立てなくなったセラを連れて、外に出た。

甘いものこそ魔法ですよね。

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