無意識に緩まる手綱
無意識に緩まる手綱
「こんな朝早くから出られるのですか?それも馬で行かれるなど……」
「王は出来るだけ早く報告を聞きたいはずよ。今から出れば夕刻には着くわ。」
「……分かっています。また私たちは留守番なのでしょう?」
「悪いわね。出来るだけ早く戻るわ。」
「そうしてください。もしまた賊に襲われたらと思うとたまりません。」
「まあそう心配しなくていい。アイルデールの護送があるから俺も一緒に行く。」
「イザーク様がそう仰られるなら……でも不愉快です!セラ様を狙っていた輩と旅路を共にするなど……」
「大丈夫、セラは護衛と先に行くから。護送の荷台があっては流石に飛ばせないからね。」
「それならば……分かりました。」
最初ツンデレだったアシュレイは今やただの過保護な侍女だ。
「じゃあ、行ってくるわね。」
不思議なことがあった。私がベルシュタイン家に住み始めたのはほんの最近のことだ。なのに今までいたどこよりも帰る場所だと感じる。離れに住んでいた時は感じなかったのに。ここでは身分も、何も偽らなくていい。きっとそれが、心地いいんだと思う。
馬に、鞭打った。駆け出す馬に王に報告すべき内容、そして恐らく先に帰還しているであろうはずの人のことを考える。
会えたら、嬉しいと思う。なのに。
(少し、怖いなんて……)
きっとレオはセラがした無茶に怒るだろう。ましてやそれをセラが楽しんだなんて言ったら……
「あんなこと、セレスティノ王子に言っておいてな……」
王子に言った言葉が打ち返されたボールのように跳ね返ってくる。
『私の恋人はシャッツェル様によく似ているのですよ。よく怒りますが愛した人には驚くほど寛容です。遅すぎる、というのは本当に全てが終わった後でしょう。』
本当に?私の言葉を信じて本当にことを起こしたセレスティノ王子の方が余程勇敢だ。
徐々に遅くなっている馬の足に気づかなかった。




