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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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切り抜ける道

切り抜ける道

戦は酷い惨状だった。何の予告もなく始められた戦にカルディア軍は防戦一方なのが傍からでも見えた。

「エルシウス様だ!イザーク様とセラ様も来られたぞ!」

軍の長の登場に多少士気は上れど指揮官のいない軍は無力に等しい。

「私は中に入って立て直す。お前たちは後ろを何とかしろ。」

「分かりました。」

イザークが軍の陣形を整えている間に敵を確認していく。恐らく、アラリック派の将軍にすら伝わっていなかった突然の戦。そして左奥に見えるのは……

「エイマール……」

確か端的に言えば特殊な性癖を持った王子が理解ある妻との関係をネタに脅され軍を出すことになった。そんな話だったはずだ。

(付け入る隙があるとすれば……)

突然の奇襲、王都からの応援軍が来るのもまだ間があるだろう。となればここで出来ることをやるしかない。

「イザーク様。」

「数百騎、いただけますか。」

「……何をするつもりだい?」

「エイマールの王子と、話がしたいのです。」

「……また無茶を……仕方ない、道は作ってあげる。でも危険だと感じたら必ず戻るんだよ、いいね。」

 仮にも血の繋がりのあるイザークはセラの行動への理解が厚かった。イザークのお陰で、セラは無茶を言えるのだ。

「はい。」

「ザシャ!」

「セラにつけ。必ず守るんだ。いいな。」

「分かりました。」

イザークが建て直した陣形を崩し、敵を乱した瞬間出来た道。イザークはエルシウスの影に隠れているものの相当な戦上手だ。

道を駆け抜けて行く。敵も予期せぬ数百騎の切り込みに対応しきれず見送られて行く。奥に行くに連れて塞がって行く道。ここからは力づくでこじ開けるしかない。

「ふぅーーっ」

(さて、やるか。)

向かってくる敵を斬り続ける。飛ぶ血飛沫、上がり続ける熱、まるで、異世界にでも来たみたいに。

「セラ様がこれ程の腕前とは。恐れ入りました。」

「ザシャ。後は頼むわよ。」

「お任せを。」

(後少し……)

軍は最早コアルシオン軍ではなくエイマール軍になっていた。

希望を込めて、叫んでみる。

「我はカルディア王国ベルシュタイン家セラフィーネ!エイマール国王子セレスティノ様とお話がしたく参った!」

……反応はない。やはり無理にでも行くしかないか。

「王子のところに?行かせるわけにはいかないなぁ。」

やや、小柄な男。だが一目でわかる。この男は只者ではない。

カキン!

鋭い斬撃を受け後ろに下がる。どうやら王子の元へ向かうにはこの男を相手にせねばならないらしい。

セラは、もう一度大きく息を吸い込んだ。

 


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