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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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暴かれた野望、その刹那に始まる戦火

暴かれた野望、その刹那に始まる戦火。

廊下を静かに歩いていた。前に見つけたのは珍しく苛立ちを醸しているアンツェルーシュ。

恐らく森の方からの応答がないのだろう。ならば今こそが好機だ。

「おや、アンツェルーシュ殿、浮かない顔をされているようだが、どうされました?」

「これはレオポルト殿下。殿下は機嫌がよろしいようですな。想い人が上手く逃げおおせれば当然でしょうか。」

「何の話かな?それよりアンツェルーシュ殿にご相談があるのですよ。」

「ほう?私に相談とは?殿下は私に良い思いは持ってらっしゃらないかと思っておりましたが。」

普段から乗ってこない誘い。この一瞬の隙を待っていた。

「実はあの宝石のことなのですが……」

「ああ、アマリエル様からお誘いを受けておりましたな。」

「ええ、誘い自体はお断りしたのですがあの宝石の美しさには魅了されてしまいましてね……私自身不当に軟禁されたことについては思うところがあるのですよ。」

「それは当然でしょう。何が望みですかな?」

「あの宝石には可能性がある。この国での採掘量は僅かなようだが利用すれば莫大な資金石になり得ましょう。私がそのビジネスパートナーになれば資金の3割をいただけませんかな?」

「……流石良いところに目をつけられる。実は既に初めているのですよ。そのビジネスをね。折角だ。見て行かれませんか?」

「おや、良いのですか?そのような大事な場所を。」

「良いのですよ。殿下は協力してくださるのでしょう?」

「ええ、勿論です。」

驚いた。まさかこんなトントン拍子に話が進むとは思っていなかった。だが油断は禁物だ。相手は何せこの男なのだから。

アンツェルーシュの後をついて行くと隠し扉のついた保管庫のようなところに来た。

「おや……?おかしいですな。鍵がありません。」

その言葉を聞きアマリエルが無事に鍵を取り出したことを知る。

「鍵ですか?別の鍵はないので?」

「いえ、あれ一本しかないのですよ……おかしいですねぇ。」

薄笑いの蛇の目がこちらを見た。背筋に一本通る寒気を悟られぬよう困惑した顔を作る。

「……誰の差金でしょうか。いいでしょう。行ってみましょうか。」

歩き出した男は間違いなく立ち入り禁止の塔へ向かっていた。背に流れる冷や汗と共に近づく塔の中で、無事に事が進んでいることを願うしかない。

「さあ着きました。君、誰かここに入らなかったかね?」

「さ、先ほどアマリエル様とエルナ様が宰相命令であると言われて……」

「ほう、それで通したのかね?」

「も、申し訳ありません。」

ゆっくりと、アンツェルーシュが振り向いた。

「……謀ったな?」

「……まさか。中に入れば分かることでは?アマリエル様にも何かお考えがあってのことかもしれません。」

「……そうさせてもらおう。ドアを開けろ。」

「はっ」

ドアが開くと静かな中。アンツェルーシュが入ろうと足を踏み入れたその時だった。

「アンツェルーシュ!」

塔の壁が反響しエルナの声を響かせる。隣にはアマリエルが立っていた。

「アンツェルーシュ宰相、第二王子アラリックの名の元国家宝石の詐欺罪にて逮捕する!」

「…………ふっふっふっ」

「何がおかしい!」

「いえいえ、見事です。アマリエル様まで引き入れるとは、やってくれましたね。ですが……私の目的を履き違えていませんかな?」

「……どう言う意味だ。」

「私の目的は開戦……そしてそれは、既に始まっています。」

「なっ……!私は将軍だ!何も聞いていないぞ!」

「ええ、アラリック派の将軍には何も伝えていません。ですがカルディアの王にはレオポルト殿下が毒を盛った疑いで軟禁されていること、私がベルシュタインの令嬢を狙ったことなどが報告されていることでしょう。今頃辺境やその一体は戦火の海でしょうねえ。」

 追い詰められた男はこの状況で尚不気味に笑う。

「くそっ……!レオ!こいつを捕える!牢にぶち込んだら私はすぐに行く!」

「こっちは上手くやる!お前は早く行け!」

エルナを送り込み、アンツェルーシュを縛り上げる。牢に入れるところを見届けアラリックの元へ走った。

「アラ!」

「レオ、どうしたんだそんなに取り乱して……作戦が失敗したのか?」

「違う。アンツェルーシュのやつ、お前の派閥の将軍たちには言わずに戦争を今朝始めやがった。」

「なっ……」

「俺は直ぐにカルディアへ戻るが数日はかかる。それまでになんとか抑えられそうなら抑えてくれ。」

「分かった。だが必ず兵のフリをしろ。もしお前の身分がバレたら殺されるのは必至だ。」

「ああ。お前も無理をするな……と言いたいところだが死なない程度に動け。」

「俺の心配は無用だ。急がねば取り返しのつかないことになる。」

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