秘密の道
さ秘密の道
「……ふぅ。」
商隊のキャラバンから飛び降り、つい安堵の息が出る。
「……セリス様、これからどこへ。」
偽名で呼ぶのが板についた兵が聞く。
「こっちよ。」
歩いてきたのは墓地。周りに誰もいないことを確認してからその一つを動かす。
「これは……」
「今日見たことは戻ったら全て忘れること。いいわね?」
「はっ。エルナ様の名にかけて。」
「さあ、行きましょう。」
暗い、湿った地下を歩く。コツン……コツン……と足音の音だけが響いていく。
半刻ほど歩いただろうか。着いたドアの前で大きく息を吸った。
ガチャ。
開くはずのない秘密の扉が繋がる先は書庫の裏だ。戸棚を押し、表の廊下に出ると幽霊でも見たかのようなアシュレイがいた。
「セ、セ……セラ、様?」
「ええ、私よ。貴女そんな顔もできたのね。」
「と、突然どこからともなく現れればこんな顔にもなります!ご無事で……」
「ああ、ちょっと泣かないで。急にいなくなって驚いたでしょう?大丈夫よ。」
「もう戻られないかと……」
「戻るわよ。身代わりの人もいたでしょう?」
「はい。何とも男勝りな女でセラ様の帰りが待ちきれませんでした。」
意外と繊細なアシュレイは余程ヒルダとは気が合わなかったようだ。
「そのヒルダは?」
「部屋におります。セラ様のお部屋に……!」
「いいから。噛みついちゃダメよ?」
「はい……」
ドアを開けて入るとどう見ても馴染んでいないヒルダとは疲弊し切った侍女たちがいた。
「あらまあ……」
「セラ様!」
「心配かけたわね。大丈夫よ。ヒルダ様。」
「私に様をつける必要はございません。貴女様はこちらの令嬢でしょう。」
「……嫌ねえこの立場は。ではヒルダ。今すぐコアルシオンに戻って頂戴。そして私がここに戻ったことをエルナ様に伝えて。」
「承知しました。」
エルナの部下は行動が早い。言うが早いが去っていってしまった。それとも単にここの居心地が悪かっただけか。
「……何があったの?」
「……一応セラ様の身代わりだとイザーク様が仰られるのでこちらとしても丁寧にしていたのです。ですがあの女ときたら……!」
「侍女としてなってない、エルナ様の侍女ならばそんなことはしない、これは口に合わないなどそれはそれは次から次へと……」
「それはまあまた……」
エルナ自身も中々の曲者だ。そこに集うものもまた曲者なのだろう。
「よく頑張ったわね。あとで労いの菓子を一緒に食べましょう。明日は一仕事残ってるから。」
「……一仕事とは。」
「明日は北の森へ狩に行くわ。でも何が起きても慌ててはダメよ。いいわね?」
「……はい。セラ様にお仕えする侍女として、命は守ります。」
「ありがとう。」




