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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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スモーキーグリーンの瞳が呼ぶもの

スモーキーグリーンの瞳が呼ぶもの

「アラリック王子とは話せました.....って顔色が真っ青ですよ。どうされたのですか。」

「.....仮面の男、アイルデールの目的が分かった。」

「なんですって?」

「やつの妻は10年前から生死不明なんだったな。」

「はい。そのように聞いています。」

「錬金術などを、お前は信じるか?」

「いえ、そんなものは........まさか。」

「そのまさかだ。あの男はそれに望みをかけた。人の魂の蘇りに必要とされるのはエイマールの葉、コアルシオンの宝石、カルディアの蘇り狐。」

「となると葉と宝石は既に持っていると考えていいでしょう。残りは蘇り狐ですが.....」

「蘇り狐の伝承を知ってるか?」

「いえ。」

「蘇り狐はその昔、スモーキーグリーンの瞳を持ったものに命を助けられた。その礼として当時死にかけていた娘を癒したとされる。故に蘇り狐はスモーキーグリーンの瞳を持った者の元に現れるとされるんだ。」

「そんな.....ではやつがセラ様を狙ったのは......」

「俺が目的ではない、ということだ。コアルシオンの方は俺だっただろうからバラバラの目的で動いていることになるな。」

「でしたらアイルデールの屋敷には証拠があるはずです。すぐに差し押さえれば.....」

「ああ。だが兄王に送っている文が返ってこない。どこかで止められている可能性がある。」

「....正に四面楚歌、ですか。」

「やれることをやるしかない。エルナと接触する。」

「エルナ様ですか?」

「やつはベルシュタイン領近くの前線に出ていることが多い。万が一の時の救出を頼む。」

「分かりました。どうやって会うので?」

「アラと同じ方法を使う。一応今のところ尾けられている気配はない。」

エルナの部屋に滑り込ませた紙切れ。これにかけるより他なかった。

図書の間にて待っていると入ってきた人影に安堵を覚える。

「まさか恋文の相手がお前とはな。つまらん。」

「誰も面白さなんぞ求めてない。ここに来たこと、バレてないな?」

「尾行には常に警戒している。アラとは話したんだろう。私に何のようだ。」

「......お前はベルシュタイン領の辺境の辺りにはよく行っているだろう。」

「ああ。それがどうかしたか。」

「そこの令嬢が俺の恋人だ。」

「.....お前遂におかしくなったのか?」

 女でありながら将軍を務めるエルナは容赦ない。そこら辺の男の方がよほど可愛らしいことだろう。

「俺は大真面目だ。仮面の男のことは聞いてるか?」

「聞いてる。証拠も見せないんだって?」

「そいつの目的が判明した。人の魂の蘇生だ。」

「.....本気で言ってるのか?あんな術を信じる輩が今更いると?」

「俺も俄には信じ難いがやつの行動はそれを示している。必要な材料は3つ。エイマールの葉、コアルシオンの宝石、カルディアの蘇り狐。」

「なら2つは手に入ってるだろうからリーチなわけだ。その狐の噂なら私も聞いたことあるぞ。確かに4年ほど前に一度出たはずだ。」

「何だと?」

「丁度あの辺境の地にいた頃だったんだ。真夏だったんだがな。見たって目撃証言をいくつか聞いたぞ。」

4年前。真夏。正にセラが家を出た時期だ。

「伝承は本当なのか.....」

「伝承?ああ、あのスモーキーグリーンの瞳を持った者の元に現れるってやつ?けど4年前そんな人間はいなかった。ベルシュタイン家なら知ってる。あそこに今スモーキーグリーンの瞳を持つものはいない。」

「......それが、いるんだよ。」

「....もしかしてさっき言った恋人?ていうか令嬢って....あそこに令嬢なんかいなかっただろ。」

「厳密には駆け落ちした妹の娘だ。娘を気に入り養子にする予定だった。その娘が養子になったのが4年前の8月5日。その家から逃げたのも8月5日。」

「確かにその頃だったように思うが.....その伝承が本当なら娘は狙われるんじゃないか?」

「ああ。だから恥を飲んで頼む。もし何かあってお前が近くにいたら....その娘を保護してくれないか?」

「......ったく、お前の女だろ。おまえが面倒見ろ....と言いたいところだがお前を呼んだのはうちの国だ。ベルシュタイン家との関係は悪化させたくない。お前がここにいる間だけは身の安全を保証しよう。」

「....恩に着る。」

「やめろ、お前に頭を下げられるなんぞ気持ち悪い。さっさとここを出ていけ、怪しまれる前に。」

「ああ。」

 

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