宰相の贈り物
宰相の贈り物
3日目の親睦会とやらで粗方派閥は読めた。レオに忠告してくる者、挑発的なものまで中々に分かりやすい者もいた。
4日目。アンツェルーシュから持ちかけられた話はこうだ。
「アマリエル様が貴方は宝石を見る目をお持ちだと仰るのですよ。それでしたら是非我が国の宝石庫を見ていただこうと思いまして。」
「宝石ならあの晩見せていただきましたよ。もう十分ですが。」
「そう仰いますな。我が国の宝石は人を、傷すら癒してしまうと言われる宝石なのです。殿下も大事な人に贈られては?さぞ喜ばれるかと。」
「私はそう言ったものは信じない主義なのですが....いいでしょう。折角のお誘いです。」
案内された宝石庫は見事なものだった。王冠用に加工された宝石にエメラルド、さサファイア、ルビーと一通りの宝石まで。その中に一際発光している宝石。それが先日も見たコアルシオンの宝石とやらのはずだ。
「見事なものですね。噂を思わず信じてしまいそうになる程の輝きだ。」
「そうでしょう?殿下には是非1つ持ち帰っていただきたいのですよ。神聖な宝石だとの噂付きでね。」
「遠慮しておきましょう。私に宝石を集める趣味はない。」
「これを持ち帰り民に見せればコアルシオンとの友好の証になりましょう。さあ。」
レオは呪いや魔法の類は信じない。今アンツェルーシュが持ちかけている話におかしい点は特にない。どうあってもレオに宝石を持ち帰らせようという意志以外には。これ以上断ればどうなるか。恐らくアンツェルーシュはセラのことを把握している。そちらを出されると厄介だ。
「では好意に甘えて持ち帰るとしましょう。まさか呪いなどではないでしょうね。」
「まさか。呪いどころか....光が強すぎて爆発するやもしれません。」
「それは困ったな。あまり身近に置くのは控えておこう。」
「まさか、冗談です。それではこの宝石庫から出るとしましょう。夜の晩餐まで時間がある。少しゆっくりされてはいかがですかな?」
持ち帰らせた宝石。これを持って泥棒にでも仕立て上げるつもりか。それともただの気まぐれか。いや、あれは脅す勢いだった。思考を巡らし歩いていれば立ち入り禁止と言われた場所まで来ていた。窓もなければ煙突もない。何かを隠すには最適な場所――――
ふと見えた人影に思わず隠れた。間違いない。ドアから出てきたのはあの側妃だ。側妃が見せたがった宝石。あの男というのは恐らくアンツェルーシュ。何かが、繋がりそうな気がしていた。中を見たくともあの警備では簡単には入れまい。仕方なく部屋に帰ると落ちている紙の端切れ。
[夕刻、書庫にて。]
レオはこの字体を知っている。向こうも痺れを切らしたようだ。
(さて、何から話すか....)
話は山積みだ。麻薬の件にコアルシオンからの刺客、アンツェルーシュの戦の望みと宝石。そして仮面の男。
待ちきれぬ夕刻までの時を、思考に費やして過ごした。




