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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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血のない戦、笑う宰相

血のない戦、笑う宰相

「晩餐会のお時間でございます。」

「ああ、すぐ向かう。」

「さて、ある意味戦ですね。」

「外交は血の飛ぶ戦場より厄介だからな。心してかかれよ。」

案内された部屋に入り、座っている者を見ればその異質さが分かる。

予想通り、王の左側に座るのは正妃ではない。宝飾品を纏い、舞姫出身というだけの美貌を持った女が座し、中央部には宰相、その隣にはアラリックではなくエスペラントが座っている。本来王の左列、宰相より上位の位置に座るべきはエスペラントだ。その位置は彼がこの外交において飾りであることを示している。

(アラリック支持派が多い中でこの席次.....宰相は余程示威したいと見える。)

案内された、王の右側の席に腰掛ける。他国の王族に対する最大の敬意が払われる位置。流石にここで礼を欠くつもりはないらしい。

「レオポルト殿下、ようこそコアルシオンへお越しくださいました。

カルディア王国とコアルシオン、両国の友好を望むものである。

今宵の晩餐、カルディアより賜った酒と共に楽しんで行かれよ。

では皆、杯を。」

一見すると普通の挨拶。だが声には覇気もなく紙に書いた言葉をそのまま読み上げたかのようだ。

「アマリエル、さあ飲みたまえ。食事も君が好むものだ。」

「まあ殿下、お酒はほどほどになさいませ。」

外交に来ているレオを無視して側妃の世話をする始末。これほどとは。

「遠路はるばる、このように戦の噂のある中で来られるのはさぞ不安だったでしょう。私は宰相のアンツェルーシュと申します。」

薄笑いを貼り付けたアンツェルーシュが話しかけてくる。王は最初から眼中にないらしい。

「お心遣い、感謝するが我が国としては一刻も早く友好を示し、戦を回避する必要があった。アラリック王子もそう思われていると聞いているが?」

「ええ、アラリック王子は平和主義ですからねえ。それに聡明だ。現王やエスペラント王子と違って。」

「彼らは平和主義ではないと?」

「そうは申しておりません。物事を視るという意味ですよ。早くアラリック王子とお話になりたいのでは?」

「そう急いてはいない。滞在はあと7日ほどある。そのうちに話す機会もあろう。」

「最終日にはお二人での晩餐の機会も用意してあります。ゆっくりとお楽しみください。お二人とも妻子のおらぬ身でしょう。....いや、殿下はもうすぐですかな?」

確信する。セラを狙ったのはこの男だ。

「何の話だ?私もアラリックも周りにそう急かされる年になってきた。敵わないな。」

「やはり妃は重要ですからな。アラリック王子にはお母上のような堅実な妻を娶ってもらいたいものです。」

この男の言うことが全て嘘に聞こえる程度には嘘臭い。

「エスペラント王子、お久しぶりです。10年ほど前にお会いして以来でしょうか。」

「ああ....そうでしたね。あまり記憶にありませんが。」

「私がアラリック王子と話している間、王子は絵を描いておられた。今も描かれているので?」

「ええ、まあ。周りにはやめろと言われてばかりですが。」

「王子の描く絵は芸術的に優れたものばかりだ。王宮を彩るのに良いのでは?」

「私は....絵は描きたいですが、外交などは苦手なので。そういったことはアラ.....」

話していたエスペラントをアンツェルーシュが遮った。

「エスペラント王子は創作活動をしながらでも国の行く末を考えておられる。素晴らしい王子です。」

「そのようだな。」

実際、エスペラントの絵はレオも見たことがある。王子、それも第一王子として生まれたことを不憫に思う程には才に溢れた絵を描いていた。

「それにしてもレオポルト王弟殿下がこれほどの器量をお持ちの方とは知りませんでしたわ。」

場を一切気にせぬ女の声が空気を裂いた。

「いえ、それほどでもないですよ。お酒はお口に合いましたか?」

「ええ、それはとても。こんな器量の良い方と飲むお酒は味も良くなると言うものです。」

「ご冗談を。王自ら妃に注がれた酒です。味が悪いわけがない。」

「あら、連れない方ね。コアルシオンでしか採れない宝石というのはご存知?」

「ええ、存じております。」

「ご興味はあって?」

「そうですね。一度見てみたいと思ったことはあります。」

「でしたら見せてあげるわ。晩餐会の後いらして頂戴。勿論殿下も一緒ですから噂など立ちませぬわ。」

女の意図が読めない。レオを誘うつもりなのか、それとも宝石に意味があるのか。

(.....飛び込んでみるか。)

「王もいらっしゃるのでしたら。ご厚意感謝いたします。」

「いいのよ。楽しみにしているわね。」

 

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