仕立て屋セリス、再び
仕立て屋セリス、再び
「お呼びでしょうか。」
「医師からお前の状態を聞いた。数日後には舞踏会に出られそうだな。」
「はい。」
「すぐに仕立て屋を呼ぶ。お前の帰還を祝う舞踏会だ。恥をかかぬよう、準備しておけ。」
「承知しました。仕立て屋ですが、決まっているのでしょうか?」
「基本は決まっているが呼びたいものがいるのか?」
「はい、もしエルシウス様がよろしければ。」
「好きにしろ。ただし腕のあるものでなければ許さん。」
「王家の服も仕立てる商人です。腕は間違いないかと。」
連絡を飛ばした仕立て屋は大慌てでやって来てくれた。
「セラ様、商人の方がいらっしゃいました。」
「通して頂戴。」
通された商人を見ると既に懐かしい思いが爆ぜる。
「セリス!」
「セラ様!いやぁまさかお呼びくださるとは思いませんでした。しかしベルシュタイン家のご令嬢だったとは.....あまりにもただの楽師には見えませんでしたので納得ですが。」
「あの時は世話になったわ。」
「殿下が本当に使い物になりませんでしたからねえ。私としては面白いものを見せてもらいました。」
そう。あの時何も言えなくなってしまったレオ。今回ドレスを仕立てて貰ったって見てもらえるわけじゃない。
「話は聞いているかしら?」
「ええ、聞きましたよ。傷を隠しセラ様の魅力を最大限に引き出すドレスを作れとの命です。」
「ええ.....意味はわかるわよね?」
「殿下のいないうちにセラ様の市場価値を最大限まで引き上げておこうという魂胆ですか。実に抜け目ない。」
相変わらずの物言いに安心する。
「そう上手く行くとも思えないのだけど....」
「セラ様が考える100倍上手く行くでしょうねえ。しかしその狙いを考えるとやはりワインレッド、それも黒寄りの色。そこに銀糸で刺繍を施してAラインでオフショルにしてしまいましょうか!」
こちらの服の熱意も相変わらずだ。
「任せるわ。セリスなら安心だもの。」
「おやおや一度の商談で信用してくださったんですか?しかしこのようなドレスを着て男の視線を集めたとなれば殿下はさぞお怒りでしょうねえ。」
あまり考えたくない。商人の時でさえ人に見せるのを渋っていたぐらいだ。
無事に、着いただろうか。
ふとあの顔を思い出す。
「寂しいですか?」
「そ、そんなことはないわ!」
「良いではないですか。この機会にいい女になって、殿下の反応を楽しめば良いのです。」
「....何だか悪女にでもなったみたいね。」
「聖女が悪女になった時の色気は堪らないものがありますね。是非その場に居合わせたいものです。」
「かなり急ぐのだけど....」
「このセリスに心配は無用です。必ずや最高のものを仕立てて参ります!」
「頼もしいわ。アシュレイ、お送りして。」
「はい、ではこちらへ。」
見送られるセリスを見ていた。次彼女が仕立ててくるドレスの持つ意味を考えながら。




