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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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静かな午前、眠る古文書

静かな午前、眠る古文書

「セラ様、朝でございます。」

アシュレイの声に目を覚ました。人間慣れるとダメなもので起こしてくれる人がいると分かると自ら起きようとしない。

「アシュレイ、おはよう。」

起きあがろうとするとアシュレイが引き止める。

「お待ちくださいませ。怪我人はまずゆっくりと呼吸を整えてから。

寝起きに立ち上がるのは兵士の習慣です。

令嬢は急ぎません。」

「あ....そうね。ふぅ。」

「それでよいのです。」

「まずは髪を整えましょうか。今日はどんな髪にいたしましょう?」

朝から癒される声の持ち主、サリアが聞く。

「特にこだわりはないから。好きにして構わないわ。」

「今日はエルシウス様が謁見に来るようにとのことです。横に流したまとめ髪で落ち着いたスタイルにしましょう。」

「ええ、そうね。」

侍女たちに身支度を整えられ、朝食の元に向かう。

アシュレイの目が光っているのが見えた。4年も前の記憶を掘り返しながら作法に従って食べる。

「及第点です。予想より良い出来でした。」

「アシュレイが素直に褒めると逆に怖くなるわ...」

「いえ、姿勢も悪くありません。余程このベルシュタイン家の教育が良かったかと見えます。」

とイザークが向かいから歩いて来た。

「おはようございます、イザーク様。」

「こちらは問題です。声の高さは少し柔らかく。親と敬意は音で区別します。セラ様のお声は少し真っ直ぐ過ぎます。」

真っ直ぐ生きて来たのがここに来て裏目に出たらしい。作法がどうだのは仕方ないにしろ話し方を変えるのはどうも好きではない。

「アシュレイ、セラは僕の妹だ。そう気にしなくても.....」

「なりません。その気の緩みが公の場での失態に繋がるのです。」

一理はある。ここに来たから万事解決というわけにはいかないのだ。

礼儀作法の練習をし、昼食を済ませると書庫で本を読む時間をもらう。

「あら、これは....珍しいわね。」

「古文書ですか?」

「ええ。錬金術のようだけど....」

「錬金術ですか。このご時世すっかり見なくなりましたがね。」

「材料となるものは案外身近なものばかりよ。珍しい動物だったり.....人が持つには危険かもしれないわね。」

「何故ベルシュタイン家にこのような書物があるのかは分かりませんが....まさかご興味があるなどとは」

「申しません。大丈夫よ。ただこの蘇り狐。私見たことがあるのよ。」

「本当ですか!?」

「ええ、この近くで....遠目だったけど間違いなかったと思うわ。すごく驚いたの。」

「それは......運が良かったのですね。」

「そうかもしれないわね。」

「そろそろエルシウス様との謁見の時間です。参りましょう。」

「ええ。」


 

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