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地獄へ戻り、貴方に安堵した
地獄へ戻り、貴方に安堵した
意識が朦朧としていた。ぼやける視界に、慌てた医官の声が聞こえる。
身体が、動かない。
手を握られている感触がした。そしてその手の主は聞く必要もない。
ゆっくりと目をその主の元へ向けた。
見たこともないような威厳も何もないような顔で泣いているから、心配になった。
呼ぼうとした名は声にはならなかった。
それでも通じたのだろう。いつものあの優しくて困った顔をしてくれた。
ざわめく部屋に、戻って来てしまったことを痛感する。後悔、しているだろうか。きっとこの人を置いて向こうに行っても後悔していた。
それなら今、ここに戻ったことが後悔にならないように。
例えそれでまた傷がつくとしても。




