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王弟が愛した娘 —音に響く運命—  作者:


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冷たい手に、願いが届くなら

冷たい手に、願いが届くなら


医者の言葉など聞かずとも分かっていた。

彼女の命の火は、わずかな灯りしか残っていないことを。

熱い身体に反して冷たくなっていく手。

「今日目を覚まさねば厳しいかもしれません。」

その言葉は遠く、現実を述べていないかのようだった。

苦しそうに呼吸をしていたセラの顔は徐々に穏やかな顔へと変わっていった。

このまま行かせてやる方が幸せなのかもしれない。そんな風にすら思う。

「殿下!」

「なんだ。」

「表の門に、裏切ったと思われる侍女が来ております。」

アイルデールに戻ったのではなかったのか。顔を見て、首を飛ばなさない自信はなかった。

「牢に入れて、死なないように扱え。」

あの侍女の首を飛ばせば、セラはきっと悲しむだろう。

これ以上。

悲しんで欲しくない。傷ついて欲しくない。

そう願ってもレオが与えられるのは愛と、悲しみと傷ばかりで自由も与えてやれない。こんな男の元に、戻りたいと思ってくれるのだろうか。戻ってきて欲しい。もう一度、名前を呼んで笑って欲しい。そしてその身体に触れることが許されるなら。

冷たい手を取った。

「セラ....行かないでくれ。」

溢れ出た醜い本心。自分が彼女を縛り付けていると分かっていても、そう懇願せずにはいられない。

涙が、セラの手を濡らしていく。

「死ぬな......どうか生きて、戻ってくれ。」

願いの言葉が、彼女に届くことを願った。

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