第78話「花子さんの逸話って多いよね」
「さぁ、いざ参られよ! 花子殿!」
バンッと勢いよく扉を開け放つリリス。
「ひぃんっ!」
奇声をあげ、雫にしがみつくレミアム。
「……むっ。何もおらぬな」
リリスは眉をひそめ、薄暗い個室を覗き込む。
「とりあえずぅ……リリスさん。扉を閉めて、ちゃんと“お作法”からだよぉ〜」
雫は楽しげに指先を振った。
「先ほどの儀式じゃな? よしっ……」
バタン、と静かに閉まる扉。
リリスは神妙な顔つきでうなずき、胸に手を当てる。
──トン。
──トン。
──トン。
「花子殿……このリリスがお迎えに参った! 御身は在られるか!」
「……いやいや、もっと普通に言ってねぇ?」
雫が苦笑しつつ仕切り直す。
「『花子さん、いらっしゃいますかぁ〜?』って感じでぇ〜」
「ふむ……では……」
リリスは目を閉じ、厳かに唱える。
「花子さん、いらっしゃいますか?」
……しん、と沈黙。
「……」
「……」
「……」
「───うん、何もないねぇ〜」
雫があっけらかんと肩をすくめる。
「ふむ……ここも不発か」
リリスは小さくため息をつき、腕を組む。
「古文書には“花子殿は困りごとを抱えた子らに応じる”と記されておったのだがなぁ……」
「おねぇ様……」
袖を掴むレミアムの指は震えている。
「是非とも花子殿には──宝の在処についてお聞きしたかったのだが……。まぁ、今宵は縁がなかったとするしかあるまい」
「それじゃぁ〜次に行こうかぁ〜」
「! そ、そうですわね! 早くここから出ますわよ!」
雫に勢いよく抱きつくレミアム。
「そうじゃな……次は………」
「…………ッス………」
「ぇ?」
レミアムの顔がこわばる。
「……今、声がしたよねぇ?」
雫にも緊張が走る。
「まさか! 花子殿かっ!」
リリスの瞳が輝く。
「ひぅっ! い、嫌ですわっ! トイレに連れてかれてしまいますわっ!!」
レミアムの涙がにじむ。
「でも、ドンドン近づいてぇ……」
廊下に、足音。
……コツ、コツ、コツ。
そして──
「いやぁ〜大変だったッス。落ちたとこが木の上でよかったッス」
「なんだ、バルか──」
「びぇええぇええ! 赤い化物ぁあああ! うええぇえええんですわぁあ!!」
レミアム、号泣。
「あ、赤い化物じゃなぃっスよ!? 自分ッス! バルッス!」
「びえぇえええんですわぁあぁん!!」
レミアムは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、雫にしがみつく。
「あの……えっと………」
戸惑うバル。
「じずぐぅっ!じずぐぅぅ!」
(※雫の名前を泣き声で呼んでいる)
「ほらほら、どいてどいてぇ〜。よしよし、もう怖くないよぉ〜」
雫がレミアムを抱きしめ、頭をなでる。
「………自分もなんか悲しくなってきたッス」
しゅんと肩を落とすバル。
「……おかえり、バル」
リリスがそっとバルの肩に手を置き、慰めるように声をかけた。
───レミアム号泣につき脱落。
残り2名+1名。
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体調崩してます……皆様もお気をつけて……




