第76話「トイレの花子さん」
「ふぅ……これで安心ですわっ」
レミアムは大げさに胸をなで下ろし、額をハンカチで拭った。
「そ、そうじゃな……」
リリスは気まずそうに視線をそらす。自分の操作ミスが原因だとは、とても言えない。
「バルさん、どこいっちゃったんだろぅ〜」
雫は窓の外に身を乗り出し、きょろきょろと辺りを見回す。
「まっ……まぁ、大丈夫じゃろう。軍仕込みの護衛ゆえ……強靭さには自信があるはずじゃ」
リリスは胸を張ってみせたが、声の端はどこか弱々しい。
「……その護衛は、今ここにはおらんが……」
最後に自分で突っ込みを入れるリリス。
「おねぇ様……おいたわしや……」
レミアムはリリスにすり寄り、抱きつく
「………吹き飛ばしたのは、お主じゃぞ?」
「さ、さぁてぇ、次に行こうかぁ〜」
雫が間を埋めるように仕切り直す。
「う、うむ……では次なる七不思議の場所は――厠じゃっ!」
リリスが腕を組み、声高らかに宣言した。
「か、厠……? ト、トイレに七不思議があるのですの?」
レミアムがぽかんと目を丸くする。
「そうじゃ。女子の……その、厠に現れるという女児のことだ」
リリスは真剣にうなずく。
「ふふっ、トイレの花子さんだねぇ〜」
雫は楽しそうに笑う。
「オカルトの中じゃ、やっぱり定番中の定番だよぉ〜」
「ほぅ! 知っておるのか、花子殿を!」
リリスの瞳が一気にきらめく。
「もちろん、有名だからねぇ〜」
「そうじゃろ、そうじゃろ! 花子殿は実に高潔なお方じゃ!」
リリスは力強くうなずいた。
「こ、高潔……?」
雫が小首をかしげる。
「魑魅魍魎に悩まされる子どもたちを助けに現れる、慈悲深き救済の守護者……! それが花子殿ではないか!」
リリスは拳を握りしめ、まるで英雄譚を語るかのように熱弁する。
「なんと……素晴らしいお方ですわねっ!」
レミアムもすっかり信じ込み、瞳をキラキラさせる。
「……は、花子さんが?」
雫だけがぽかんと取り残される。
「んむんむ!」
リリスは一人で真剣にうなずき続けていた。
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わかる人いるかなぁ……(´・ω・`)




