第74話「学校へいこう」
──夜。
人の気配を失った学び舎は、昼間のざわめきが嘘のように沈黙に包まれていた。
校舎の窓は月光を淡く反射し、まるで無数の目がこちらを覗いているかのようだ。
吹き抜ける夜風に、錆びた鉄扉がきぃ……と軋みをあげる。
「……再び来たぞ……ガッコ……っ!」
リリスが静かに呟く。
昼間は見慣れた建物も、夜に立てばまるで異界。影と冷気に満ちたその姿は、不気味さを濃くまとっていた。
「わぁ……しーんとしてる、です……」
雅は身をすくませ、リリスの背中にぴたりと張り付く。
「いい雰囲気だねぇ〜。探検にはぴったりだよぉ」
雫はお気楽に笑いながら、校門をひょいと跨いだ。
「夜の学校……まさしく、七不思議に挑む舞台ですわね」
レミアムは胸を張り、宝探しの冒険者さながらに堂々と歩み出す。
「……はぁ」
リリスは額に手を当て、仲間たちの温度差に早くもため息をついた。
「よいか? これは遊びではない……七不思議に触れた者の末路を、話したじゃろう?」
ゴクリと息を呑み、リリスの袖を掴むレミアム。
雅が不安げに手を挙げる。
「師匠……ど、どの不思議から探す、です?」
「ふむ……」
リリスは顎に手を添え、月明かりの下で思案する。
「――“偉人たちの動く絵画”……これが、最初に探す七不思議じゃ」
「ひぇぇ……動く絵画、です!?」
雅が小さく悲鳴を上げる。
「ま、魔界でも聞いたことありませんわっ……」
袖を掴むレミアムの手に、ぎゅっと力が入った。
「じゃあ決まりだねぇ〜。思い当たる場所は音楽室、かなぁ?」
雫が楽しそうに足を進める。
リリスは皆を見渡し、静かに頷いた。
「……よし。行くぞ、七不思議の調査へ――」
──その時。
「なぁに、してるんッスか〜?」
背後からひょっこり顔を出し、指先からポッと火を灯す影。
「ピッ!」
「な、なっ……何故バルがここにっ!?」
リリスは飛び上がるほど狼狽した。
「蓮兄ぃから聞いたんスよ。『心配だからついて行ってやってくれ』って〜」
頭の上で手を組み、にへらっと笑うバル。
「も、もぅっ……蓮は心配性なんだからっ……」
口を膨らませつつも、頬がゆるみ、ついニヤついてしまうリリス。
「ムキィィーッ!」
どこからともなく取り出したハンカチを噛み締めるレミアム。
「ま、とりあえず自分も護衛として同行するッスよ〜」
軽やかに肩を回すバル。
「まぁ……仕方あるまい。よし、行くぞ――むっ?雅?」
「……………」
気絶して、雫の膝枕で白目をむいている雅。
雫はケラケラと笑いながら、その額にポンと手を当てた。
「変な声あげて気絶しちゃったみたいだねぇ」
リリスはこめかみに手を当て、ため息を深くつく。
───雅、脱落
残り4名
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