第68話「そこに愛はあるんか?」
「──だが、断る」
冷徹に言い放つリリス。
「お任せくださいましっ! わたくしの頭脳と魅力があれば、この“選定の宝”も……あ、あれ?」
胸を張っていたレミアムは、言葉の刃に撃ち抜かれたように硬直する。
「断る」
リリスは短く、鋭く切り捨てた。
「だ、断るって……な、何でですの!? オネェ様ぁ!」
レミアムの瞳が揺れ、悲鳴のような声が響く。
「そりゃ無理ッスよ」
横から低い声。バルが腕を組んで口を挟む。
「同じ“魔王候補”なんスからね。……つまり敵同士ッスよ」
細めた瞳は氷のように冷たい。
「そ、そんな……」
レミアムは力なく膝を折りかけ、唇を震わせる。
「わ、わたくしは……ただ……オネェ様と一緒に……」
「魔王となれるのはただ一人」
リリスは淡々と告げ、腕を組む。
「一つの宝を二人で探して……それに何の意味がある?」
「そ、それは……」
レミアムの声が掠れ、今にも消えそうになる。
けれど──その瞳に、ふと強い光が宿った。
「……ならば、わたくしは……魔王などいりませんわ」
「……っ」
リリスの眉がわずかに動く。
「宝も、権力も、名誉も……そんなもの、わたくしにはどうでもいいですわ」
レミアムは膝をつき、まるで誓いを立てるようにリリスを見上げる。
「わたくしにとって唯一の意味は……オネェ様と共にあることだけです」
「……レミアム」
リリスの声が低く震える。
「魔王の座を捨てても構いません。候補を降り、誇りを失い、笑われようとも──」
レミアムは胸に手を当て、静かに言い切った。
「この身、この魂、この命すべて……リリス=ヘルバウンド様と共に捧げますわ」
「…………」
リリスは返す言葉を失い、ただ睨み返すように視線を逸らす。
「……何故だ。なぜそこまでする?」
しばしの沈黙のあと、リリスは吐き捨てるように問いかけた。
「理由はひとつ」
レミアムの声は澄み切っていて、迷いがなかった。
「愛ですわ」
「……あ、愛……?」
リリスの頬がわずかに赤みを帯びる。
「わたくしは……あの日、貴方に救われた時から」
レミアムは胸に手を当て、切実に告げる。
「ずっと、ただ一途に……リリス様を愛しているのです。それ以外に説明はいりませんわ」
「…………っ」
リリスは視線を逸らし、言葉を失った。
蓮とバルが互いに目を合わせ、小さく肩をすくめる。
空気は、重くも甘い緊張に包まれていた。
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