第65話「レミアム、ステイ!」
──霧ヶ原宅
「いらっしゃぁい、リリスさん、蓮さん……それからバルさんも〜」
にこやかに迎える雫。
「自分は“ついで”ッスか」
頭の上で手を組み、わざとらしく落ち込むバル。
「いやぁ〜、でも正直……蓮兄ぃまでついてくるとは思わなかったッスよ」
「他の魔王候補の方も気になりますからね。それに──」
蓮は隣のリリスに視線をやる。
「……会いたくない」
リリスはそっぽを向き、蓮の袖をぎゅっと掴んだ。
「リリスさんをこのまま一人で行かせるのも心配ですし」
蓮は苦笑しながら、袖を引く小さな手をそのまま受け止める。
「なるほど、そういうことッスねぇ」
バルは肩をすくめた。
「第二層コーラル領の……レミアム・コーリル。名前だけは聞いたことがあるッスけど……」
バルの瞳が細く光る。
「リリス様がここまで嫌がるなんて……只者じゃないッスね」
「ほらほらぁ~、立ち話してないで入った入ったぁ〜」
雫が手をひらひらと振る。
「……さ、行きましょう。リリスさん」
蓮が穏やかに促す。
「うぅぅ……行きたくない……」
袖を握る手がますます強くなる。
◆◆◆
──霧ヶ原宅・リビング
「じゃぁ呼んでくるからぁ〜、ここで待っててねぇ〜」
雫が軽やかに部屋を後にする。
「広い家ッスねぇ〜」
バルがきょろきょろと辺りを見回す。
「ええ。ご両親は海外赴任で……今は一人暮らしだそうですよ」
蓮が答える。
「はぁ〜、こんな広い家を一人で……いや、今は“ふたり”ッスかぁ」
バルが顎に手を当てると、その時。
──ドタドタドタッ!
廊下を駆ける音。
遠くから、リリス、リリス、リリスと連呼する甲高い声が響いてきた。
「……来たッスね」
バルが身構える。
──バタンッ!!
勢いよく扉が開く。
「リリス!!!ですわっっ!!!」
「………ひ、久しぶりね。レミア───」
リリスがかすかに眉をひそめる間もなく。
「リ・リ・ス・オネェ様ぁあああぁあああああ!!!!」
悲鳴のような叫びと共に、レミアムは一直線にリリスの胸へ飛び込んだ。
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